菩薩

天才スピヴェットの菩薩のレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
3.8
ついに『半分、青い。』も最終回を迎え、明日からはどう憂鬱な朝を迎え撃てば良いのか皆目見当もつかず絶望に沈んでいるわけだが、思えば『ペンギン・ハイウェイ』のアオヤマ少年にしても、幼少期の律にしても、あの天才少年達の元ネタはこの作品なのでは?と今更ながら思う。少年×ロードムービー、及び家族の再生物語なんて時点で☆3.5以上確定案件の様にも思うが、これを只の感動ストーリーと捉えるか、ジュネ本人の「アメリカ嫌い」の色眼鏡を拝借して観るかでは評価も変わって来るのではないか。たかだか10歳の少年がライフルの暴発で命を落とし、残された少年もまたその責め苦をその小さな身体に一身に背負う、元が張りぼての家族だからキャンピングカーの中のパネルにも溶け込めてしまい、少年の悲劇は簡単に見世物にされてしまう、アメリカ社会が子供に担わせる苦悩を、ジュネらしく毒を持って表現していると思う。と同時に家出の道中出会う「真っ当な大人たち」であったり、母の胸の暖かさを、父の背中の大きさを改めて知る終盤の再開シーンが、しっかりご褒美として我々に届けられる、この飴と鞭の使い分けは非常に好みである。父さんが残した熱い想い、母さんがくれたあのまなざし、今日も地球と共に、スピヴェットが作り出した永久機関(仮)は回り続ける、それでも人間界に「絶対」と「永遠」は無い、父が幼い兄弟に与えたシーソーが再び動き出すのは、そう遠くない未来になりそうだが。
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