竜平

インヒアレント・ヴァイスの竜平のレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
3.5
舞台は1970年のカリフォルニア州。マリファナ中毒の私立探偵ドックのもとに舞い込む元恋人からの「とある依頼」。やがて始まる独自の調査と、見えてくる何やら陰謀うごめく事件、その行き着く末やいかに、という話。

ヒッピーとドラッグ、などなど、70年代の時代背景やカルチャーを汲みつつ群像劇チックに展開していく探偵ミステリー映画、という感じ。ポール・トーマス・アンダーソン作品としては『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』『ザ・マスター』とシリアス及びシニカル路線のじっくりな作風を描いてきての、今回は「まさにブラックコメディ」という様相、でテンポ感も速め。作品毎にちょいちょい色が変わるあたりおもしろいなと。トマス・ピンチョンという作家の探偵小説『LAヴァイス』が原作とのことで、今作はこの原作を読んでいればこそわかることがたくさんあるのではないか、なんて気がしてくる。というのも、なかなか多めの登場人物、その名前やら通称やら団体名やら固有名詞が劇中たくさん出てきて、またそれらが至る所で繋がっていくという展開。主人公のもとに来るいくつかの依頼、富豪ミッキー・ウルフマンや麻薬産業、そしてそこに蠢く事件、更には主人公自身の元カノへの未練みたいなものとも一緒に展開していくもんだからいやはや頭がこんがらがる。合計二回鑑賞したけども、それでもよくわからない、というか追いつけなかったところが多々。事態が二転三転していくという点で先が読めず楽しいは楽しいけど、話が単純にややこしい。このややこしさはもはや敢えてやってるんじゃないか、なんて思えてくる。緩めのテンション感も相まってまぁ途中で飽きちゃう人もいるかも。ひとまず集中力がある時に見ることを薦めたいかな。

何気に豪華キャスト絢爛。ダラしないけどなんだか味のある主人公をホアキン・フェニックスが好演しつつ、ジョシュ・ブローリンやらオーウェン・ウィルソンやらクセ者役をやらせるにはもってこいな俳優たちが勢揃い。そこらへんビジュアル的にも楽しかったり。個人的には同監督の『マグノリア』が好みで、そっちにあるようなニュアンスを勝手に期待してたら全然違うのが来たってゆー。眠気もなくしっかり最後まで見れたし、それなりに楽しんだはずなのに、思い返してレビューを書こうとしてもう内容をあんまり思い出せない俺がいる。総じて、よくわからんけど中毒性がある、そんな一本。とか書きながらジョシュ・ブローリンの「モット!パンケーキヲ、モット!」のセリフだけ思い出した。おしまい。
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