野球用のけいタイガ

ジャッジ 裁かれる判事の野球用のけいタイガのネタバレレビュー・内容・結末

ジャッジ 裁かれる判事(2014年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

「今まで会った中で最高の弁護士は誰?」

ロバートダウニーJrが演じるハンクがふと問いかけた質問。


ハンクはニューヨークで弁護士を営んでいる。彼は頭が良く、敏腕弁護士であった。

ある裁判の途中で、自分の母親が亡くなったと連絡があり、急に実家に帰ることとなった。

ハンクの実家はニュージャージーの田舎にあり、長男のグレンと三男のデール、そして裁判長をしている父ジョセフがいる。


弟のデールは知的障害を持っており、ハンクとの関係は悪くない。しかし、兄のグレンとハンクと父ジョセフとの関係は悪い。

特に父親との仲は最悪で、実家に帰ると直ぐに喧嘩するほどだ。

兄は野球が上手く、スカウトが来るほどの才能があった。ある時ハンクが兄を乗せて車を運転している時、交通事故にあい兄は手を怪我した。怪我によって野球選手としての生命が絶たれ、ハンクは事故で自分の兄の将来を潰してしまった事に負い目を感じている。
家での居心地が悪くなったため、家を出ていった。


母親を無くした日の次の朝、父親の車がボコボコに潰れていることに気づいた。父親もなにかにぶつけた記憶はなく、車が壊れた原因が分からない。

母の死に父が悲しみ、飲酒運転でもしてどこかにぶつけたのだと軽くハンクは思いその後ニューヨークに帰ろうとする。


父の車には人の血痕がついており、遺体が発見された。



ハンクは慌てて、実家に戻り父親を弁護することにした。


調べていく中で、遺体は“マークブラックウェル”と言う人物であることが分かり、このマークというのは昔ジョセフが裁いた人物であった。

マークは1度は軽い刑で処されていたが、釈放後また殺人を犯し、懲役20年の刑を受け、戻っていていたばかりだった。

ジョセフはマークがもう二度とやりませんという言葉を信じて、軽い刑にしてあげたのに、野放しにしたせいでまた罪をおかした。優しさを裏切ったという動機でジョセフはマークを殺したという風に警察,検察に思われてしまった。


ハンクは自分の父親は意地悪だか、人を殺したりはしないと信じて弁護する。



1番の疑問は、車に乗った記憶はあるがなにかにぶつけた記憶は無いというところだ。

デールのフィルムから、父親は何かしら病をかかえていることが分かる。父の医者を問い詰めると末期のガンを患っており、治療も受けていることが分かる。
治療によって、記憶障害が起こることがあるとも聞いた。


故意に人を殺せるような精神状態では無いと裁判で言えば、罪は軽くなると思い、この事を話そうと父にアドバイスする。

しかし父は、まともな精神状態じゃない奴が裁判長をしていたなんて、市民に言えないとハンクの助言を断る。



父は病気のせいで、生活が不自由になっていくところもあったが、そこをハンクは助けるようになった。共に暮らす中で2人の関係は少しずつ良好に。

ジョセフが妻を無くした悪い夢を見て叫んでいたところ、ハンクは慰めに行った。
その時、ハンクは父に聞いた。

「今まで会った中で最高の弁護士は?」


「ミスターショー」

と父は答えた。

ショーは極悪人で、街の人に唾をはかれても、懸命に弁護する人だったそうだ。


ある時、街に竜巻が来ていたため、家族全員で地下にこもってデールの昔のフィルムを、鑑賞していた。映像の途中でハンクが事故した時の映像が流れた。

フィルムを止めろと父は怒り、デールの投影機を壊した。


ハンクとジョセフはまた喧嘩する。

「なぜ卒業式に来てくれなかった?」
「なぜ事故した時、庇ってくれなかった?」
「なぜ、仮釈放中の人達は褒めるのに、僕のことは褒めてくれない?」

最後に
「僕は主席で卒業したんだぞ。主席だ」
と、



裁判の中、証拠の防犯カメラの映像を確認した際、ジョセフはマークに会っていた事を思い出した。

そして、裁判中に倒れた。



病院でジョセフはハンクに、自分が殺したのかもしれないと言い出した。
ハンクは、覚えてもないのに絶対そんなこと証言台で言うなよと説教した。



ジョセフの証言の日

検察に恨んでいたマークに会っていたけど、車で轢いたか轢いてないのかの記憶は無いのか、尋問された。

ジョセフは一貫して「記憶が無い」
と証言したが、最後に、


「記憶はないが、故意に轢いたかもしれない。」


と伝えた。



ハンクはこのままだと、父は重罪で裁かれると思い、絶対に言うなと言われた事を言った。


「何か、病をもっていますか?」


ガンの治療をしていること、治療で記憶を失う可能性があることなど全て裁判員と裁判長に晒した。


マークに会った日のことを話してもらう事に。

マークはジョセフに、汚い口で

「お前の妻が亡くなったらしいな。」
「墓がホープの墓に近い。」

「両方の墓に小便かけに行ってやるよ。」


と言われた。



ハンクは続けた。


なぜ、人に厳しいあなたがマークに初め軽い判決を与えたのか問うた。



「自分の息子とダブった。」
「自分の息子もやんちゃしていた。そんな息子とマークを被らせてしまい、助けてあげたいと思った。」



ハンクはそこで気づいた。
事故した時に自分を少年院に行かせた理由、かばってくれなかった理由を。



ジョセフは人を殺すために計画を立てて行う精神状態ではなく、衝動的な故殺であったため、懲役4年の刑で処されることになった。


ジョセフはグレンには
「お前は自慢の息子だ」
デールには
「兄さんたちを助けてやってくれ」

そう言って警察に連行されて行った。





数カ月後、
検察の恩赦を受け、ジョセフは釈放された。

久々にハンクはジョセフと船に乗り、釣りへ。


「お前だよ。」



「最高の弁護士は、お前だ。」



ジョセフはハンクに突然伝えた。



今まで1度も褒めてくれなかった父が、初めてハンクを褒めた言葉だった。


そして、その後すぐジョセフは息を引きとった。






ハンクは、家族から嫌われていると思っていた。

自分のせいで兄の将来を台無しにし、兄を期待していた父からも恨まれていると思っていた。



一流の法科大学に入り、主席をとるくらい努力したのも、ニューヨークで敏腕弁護士として活躍したのも、父と同じ法律の世界で頑張る自分をただ一言褒めて欲しかったに違いない。


そして、父もハンクに帰ってきて欲しかった。素直に褒めてあげたかった。




父の葬式で、ハンクはサラッと帰ろうとした時、兄のグレンが強くハンクを抱きしめた。






「俺はここにいるぞ。俺はここで生まれた。」




故郷を嫌っていたハンクがやっと、自分の家に帰ってきたのだった。