MasaichiYaguchi

リトルプリンス 星の王子さまと私のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

4.0
世界的なベストセラーであるサン=テグジュベリの「星の王子さま」の世界観そのままにファンタジーアニメ映画化した本作は、ヒロインの9歳の女の子のような子供たちだけでなく、かつて子供だった大人にも掛け替えのない大切なものを思い出させてくれる。
現代のパートを3DCGで、そして合わせ鏡のように挿入される原作物語のパートは、和紙で出来ているようなパぺットによるストップモーション・アニメで描かれていて、その二つの世界を行き来しながらストーリーは展開していく。
女の子がいる現代はひたすら生産性と効率が求められ、街も建物も無機質で画一的、そんな社会でより良く生きる為、息の詰まるようなスケジュールの中、彼女は勉強漬けの日々を送っている。
そんな彼女が名門校に入る為に引っ越した家の隣には古い家に住む個性豊かなおじいさんがいた。
女の子がこの隣家のおじいさんと出会い、触れ合っていく中で、彼女の無機質でモノトーンの日々が賑やかでカラフルなものに変わっていく。
大人に成長して特に社会人になると、人は成功することや、発展する話には耳を傾けるが、夢物語をする人に対しては胡散臭く思ったり、敬遠したりする。
おじいさんとの出会いで、夢の世界に触れた女の子が、その掛け替えの無い世界を失いそうになった時に決意して実行したこと。
その夢のような、ファンタジーのような女の子の勇気ある行動が本作品で描きたかったことのような気がする。
原作同様に固有名詞の持たないキャラクターたちによるこの物語には、子供たちばかりでなく、原作を愛する人々、そしてかつて大切なものがあった大人たちの心にも響くものがあると思う。