秀ポン

アイ・アム・ニューマン 新しい人生の見つけ方の秀ポンのレビュー・感想・評価

3.2
そこまで絶望的な人生って訳でもないけど、息子に嫌われてるっぽいから家族を捨ててちょっと別人になってみて、同じく他人に成り代わってた精神不安定な女とプラトニックな出会いをして、でもやっぱセックスはして、しまくって、最終的に他人に成り代わるなんて上手くいきっこないんだからちゃんと生きなきゃねって女を勇気づけて終わってた。
セックスしてサッパリしたから息子とも向き合えそうだし、なんならしばらく離れてたおかげで息子も父親の大切さに気付いたっぽい。だからニューマン的にはオールオッケー。

と、クソつまらんクズ男の話と切り捨てることもできるんだけど、意外と面白かった。

誰でもなくなった2人は必然惹かれ合うことになる。なぜなら誰でもない人間と話すことができるのは同じ誰でもない人間だけだから。(補足1)
2人はいろんな家に空き巣的にお邪魔して、いろんな2人として生き直してみる。(このシーンが面白かった)
だけど彼女が彼の、ウォレスとしての人生の核心の部分に触れてしまったために、意図的に曖昧にしていた2人の関係は元プロゴルファーとその娼婦に固定されてしまう。
もはや誰でもない誰かを演じることが不可能になった2人は、お互いにインタビューする形で自分と向き合うことになり、ようやく自分の人生を生きる決意をする。

ヤバめな話の割にはコリンフォース(補足2)のおかげで不思議と嫌悪感は湧かなかった。凄い。
しかし行動に対して何の責任も引き受けないのはあんまり納得いかない。
それならもういっそのこと2人で行き着くところまで行って欲しかった。なんとなく元いた場所に帰る。みたいな結末はあまりにも穏便すぎて若干の欺瞞を感じる。

それに、2人が所々でわりかし普通に過去の人生について話してるのもかなり気になった。2人とももっと本気でニューマンとマイクを演じろよ。なあなあで演ってんじゃねえよ。
冗談抜きで、このグダグダさはこの映画の決定的な欠点だと思う。2人とも自分達が作り出したルールに無自覚すぎる。

でもニューマン(=ウォレス)的にはオールオッケーだからいっか。

(しかしまあ普通に見れば主人公の行動は援交相手に説教するおっさんそのもので、そう見方をするにしてもだいぶ面白かった。)

補足1
昔の知り合いと話すときにはニューマンはウォレスに戻ってしまうし(そもそも元の人生を捨ててるんだから元の知り合いと話すなんて言語道断)、そうでなくても誰かと深い関係になるとその時点で「誰か」にはなってしまう。

補足2コリンフォース
コリンファースの力のこと。コリン力。
コリンファースの力だけでなく、全編通して低体温の演出なのも良かった。これで終盤になって急にさも感動げな雰囲気を出してこられてたらムカついていたと思う。
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