月うさぎ

バブルへGO!! タイムマシンはドラム式の月うさぎのレビュー・感想・評価

3.3
天才科学者田中真理子が水流の研究中に偶然にできちゃった「ドラム式洗濯機型のタイムマシン」に乗って、不景気が止まらない2007年の日本から17年前のバブル時代の日本へタイムトラベル

見る前からバカでしょう!と思うでしょう。だから誰も期待しない訳。真面目なSFだなんて。
理屈も説明も無く、魔法でもファンタジーでも奇跡でもない。ご都合主義ですらないのです。
おいおい、どうやって現代に戻るんだよ?ってみんな突っ込み入れてますよね。絶対に。

タイムパラドックスも、歴史を変えることなんかも、ヘとも思わぬ能天気ぶりが魅力です。
笑えますよ~。

普通のタイムトラベルものなら、相当昔に遡らなければ時代のギャップは感じないものですが、現在生きている私なんかがつい先日のことのように記憶しているにもかかわらず、バブルの前と後は確かに別の時代なのでした。

ファッション、経済、文化、人の意識。全て
いいところに目をつけた企画ですよ。

これらが過去のものだとわかっている目で見ると、あの時代の人たちのなんと陳腐で馬鹿そうなことか。

でも、この映画はそれを批判するためにあるのではありません。

バブルがハジけなければ。
こんな長い不景気なかったのに。もっといい日本になっていたはずなのに。もったいない。
だからバブル崩壊を阻止しようじゃないか。
そんな安易で哀しい明るさがこの映画の精神です。

なるほど、この映画。「私をスキーに連れてって」など数々のバブル文化を仕掛けたホイチョイ・プロダクションズの製作なのでした。

バブルはこの映画に描かれているような話があふれていました。確かに。ウワサでは。
でも、誰もがここまでも金をバラまいていたわけではないですし。
私だって六本木のディスコや青山のディスコなんかへも行っていましたよ。
でもボディコンなんかが流行していたのはこの時代より後です。
湾岸戦争で景気に暗雲が立ち込めた後、むしろ狂ったような時代が幕開けするんですよ。
崩壊の前日の投げやりな狂乱のようにね。

この景色に覚えがある人というと、東京近郊在住の人。
しかも1990年当時20~30歳くらいまでの人に限定されるはず。
そんな狙い撃ちみたいな狭いターゲットの映画でいいのか?
でも、知らない人にバブルってどんなの?と教えるのにも役に立つかもしれませんね。

この映画ではあくまでもおふざけで通していますが、私はこの映画にはただのお笑いとは思えない点がありました。
バブルの崩壊のきっかけになったとされる『不動産融資総量規制』ですが、真相はどうだったのだろうか?と考えてしまいました。

この時の通達を出したのは大蔵省銀行局長の土田正顕。当時の大蔵大臣は橋本龍太郎。ということですが
いったい彼らは責任をとったのでしょうか?
それとも、この映画のように……?!


今の我々には、2007年も遠い過去です。
東日本大震災の前後で人の意識もさらに変わったと思います。そしてコロナときた。
今、バブルが弾けなければよかったのに。と本気で思っている人がどれほどいるでしょうか?
あれはあれで役にたったのだよな。とは思っていても、あの嘘くさい物価高や土地高が本当に人を幸せにすると信じる人はいないでしょう。

この映画のようにあの頃に戻れたら?
友達と夜な夜な盛り場へ出かけてオイシイ思いをし、株を買い、転職もして、コンサートや美術展に行きまくり
でも決して不動産には手を出さず。高い家賃の部屋には住まず。
…なんてことやってたらきっと結婚なんかしなかったろうなあ。
どっちがいいのやら。


さて、1990年と2007年がどんな年だったのか。
ある出来事と人が共通項になっていました。

1990年 海部首相&ジョージ・H・W・ブッシュ米国大統領
  ローリング・ストーンズ初来日公演。ポール・マッカートニー初来日公演
 任天堂のスーパーファミコンが発売開始。
  イラクがクウェートに侵攻。翌年1月、多国籍軍のイラク空爆開始により湾岸戦争勃発。

2007年  安倍晋三首相&アメリカ大統領ジョージ・W・ブッシュ(息子)
  イラクへのアメリカ軍2万2千人の増派を発表。国民からは批判の声が挙がる。
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