【鏡よ鏡、娘を捧ぐから私を映しなさい】
キネ旬シアターにて。ちょっと堅苦しく独り言ぽかった。
監督のトラウマとなった実体験の映画化ですが、この辺りが限界だったのか。また演出に華がないですね。あえてそうしたのかもですが、全体燻ったような仕上がりでいまいちスッキリしない。
それでも心の動きは丁寧に追っており、拾い落したところもありそうなので、DVDで再見したいとは思いました。
12歳、丸出しヌードを実の母親に撮られ、世間に発表されるヴィオレッタ。始めは大好きな母に、美の世界と言われるままモデルを楽しんでいたがやがて…。
写真家イリナ・イオネスコの娘、エヴァが自分を主人公にしているからこうなりますが、イリナの言い分を厚くしたら全く違った映画になるでしょうね。その方が映画としても複合的で豊かになったろうとは思いました。
イリナは、モデルは娘でも自分の心のポートレイトを撮っていたわけで。その器として結果的に娘を利用したことになり、娘は早くにそれに気づきママの人形はゴメンだ、となる。
しかし、エヴァもこの崩れた幻想に魅入られた面は確実にある筈で、例えばモデルをやるようになってから、ビッチだが艶やかなファッションを変えようとしなかったのは何故なのか。まるで『タクシードライバー』のジョディ・フォスターのようでしたが。
そんな、ある意味共犯者でもある女二人の背徳カオスに観客も巻き込んでほしかったです。まあ児童虐待に映っても仕方ない出来事ですが、それで済まぬ部分をもっと掘れたのではと。第三者が描いた方が、そこは巧く仕上がったのかもしれません。
全体何となく、母親になれず魔女になってゆく女と、母親が欲しいが魔女からは逃げる娘の話、とざっくり括りたい気分でした。女であるってめんどくさいですね。
この母娘は互いに共通点あり、惹かれるけれども馴染ない。双子のようなコスプレで隣り合うところなんか面白いんですが。
私はロリータってあんまり萌えないので(笑)、ヴィオレッタ役アナマリアちゃんの大胆さに特別思い入れもないのですが、エヴァ本人より美人過ぎるのが可笑しくて。
問題の写真を見ると、本人は平安時代みたいな顔しています。なかなかのぶっきらぼー(笑)。映画化で商業的要請はあったにせよ、エヴァさんも自分の思い出は美しく残しておきたかったのでしょうか。
ちなみに私は、屋外で潔く丸出しになる成人モデルの大胆さの方が好きです。
ヴィオレッタの母、アンナ役イザベル・ユペールさんはさすがの存在感ですが、当時40代のイリナ本人とは年齢が違い過ぎ、重要サブキャラ曾祖母が祖母に見えて困った。
でも既に亡くなったアンナの実母との関係が重要なので、ここで戸惑わせるのは語りとして致命的だと思いました。
アンナはクラシック・ハリウッドの悪女イメージで演出したそうでわかり易かったですが、そこにも、悪に魅入られるイメージを盛り込んでいるんですね。
アンナの言動は、フェミニズムの盛り上がりと無縁ではないでしょうし、パンクとのつながりも成程なーと思いました。きちんと歴史と絡めると、もっと見えてくるものがある気がします。
さて、いきなりこんな役で花開いたアナマリアちゃんはどんな女優に育つやら。今度はエヴァが魔女になってゆくのだろうか?
<2014.9.1記>