O次郎

クジョーのO次郎のネタバレレビュー・内容・結末

クジョー(1983年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

スティーブン=キング原作の動物パニックムービー。

物語冒頭で早速、主役であるセントバーナード犬のクジョーが兎を追い掛ける中で野生のコウモリに鼻先を噛まれ、その後の不穏な展開を暗示する。
物語が進むにつれて鼻先が赤黒く膿み、口元へ拡がって、やがて顔全体に感染が顕れていく様はグロテスクながら、場面場面での病状の進行具合につい目が奪われてしまう。今現在なら動物愛護の観点からもCGで済ませてしまいそうだが、当時の技術的事情だからこその入魂の特殊メイクは必見。虚ろな目元からアメーバ状の体液を垂らしている様のショックたるや。

100分程度の尺の真ん中ぐらいまではなんでもない田舎町の家庭風景が延々映され、やや退屈だが、その「溜め」があるからこその満を持しての狂犬病発動による連続殺人の迫力が圧を感じさせるので結果オーライ。
終盤の修理工の家の軒先でガス欠の車内でクジョーの襲撃に怯える母子の構図はとても巧い。
前後左右のガラスがクジョーの猛攻でヒビが入り、その体液と爪痕でベトベトガスガスになっているのが最高に生理的嫌悪感を催す。

最終的に母親の勇気ある行動でクジョーを撃退し、危うく母子ともに助かるが、原作小説では息子は処置の手遅れで亡くなってしまうそうな。
いっそのこと、映画ではその展開にさらに輪をかけて、
母親が命がけでクジョーを始末して息子を車外へ救い出すもののすでに手遅れ

それを憂いた母親が、クジョーに殺された保安官の銃で自害
とかいう展開で観客をドン底に叩き落としてくれても良かったかも。
しかしまぁこの結末でも佳作に間違い無し。

一番のショックシーンは、閉じこめられた車内で息子が脱水症状と犬に襲われるストレスで白目を剥いてひきつけを起こす場面......あれは言葉を失った。
そんなこんなで、『ベートーベン』のダークサイド版、という印象でございました、とさ。
O次郎

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