MasaichiYaguchi

マエストロ!のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

マエストロ!(2015年製作の映画)
3.2
この作品を通して「天籟」という言葉を初めて知った。
辞典では「①天然に発する響き。風が物に当たって鳴る音。②優れた出来栄えの詩歌のたとえ。」と出ている。
本作では「音のない音」、「静寂の中、宇宙から降り注ぐ音」という意味で使われている。
歴代最年少で中央交響楽団のコンサートマスターになった香坂真一は、子供の時に父から教えられたこの「天籟」の境地を求めている。
しかし、その中央交響楽団も解散し、現在再就職活動中。
この香坂に謎の人物から楽団再結成の話が舞い込み、彼同様に解散の憂き目に会い、再就職も儘ならない他の「負け組」楽団員たちも参集して一旗揚げようとする。
彼らを呼び集めた張本人で、破天荒な指揮をするのが天道徹三郎。
この型破りで毒舌な天道を西田敏行さんが人間味溢れる人物として演じ、天道と様々な問題を抱えた一癖も二癖もある楽団員たちの板挟みになって振り回される主人公を、松坂桃李さんがバイオリン演奏をはじめ、人として成長する彼の姿を共感を覚えるような演技で表現している。
またmiwaさんが悲しい過去を抱えながら前向きに生きる橘あまねを生き生きと演じていて魅力的だ。
果たして彼らは復活コンサートを遣り遂げることが出来るのか?
交響楽という言葉が表すように、人々が奏でる音が響き合い気持ちが一つとなった時に想像を超える感動がもたらされる。
鑑賞中、恰もコンサートホールのように感じられた時、久しぶりにクラシック音楽の熱いハートに触れた気がした。