福福吉吉

紙の月の福福吉吉のレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
1994年、梅澤梨花(宮沢りえ)はわかば銀行の契約社員として外回りで優秀な成績を収めていたが、主人との淡白な生活に虚しさを感じていた。ある日、梨花は顧客の孫の平林光太(池松壮亮)に出会い、不倫関係になる。光太との時間に満足するうちに梨花は顧客の預金に手をつけてしまう。梨花の金銭感覚は狂い始め、それは大きな暴走へとつながっていく。

◆感想◆
真面目な銀行職員だった女性が不倫を契機に顧客のお金に手をつけてしまうストーリーであり、その女性職員の異常さと金銭感覚の暴走が両輪となって狂気的な作品になっていました。

主人公の梅澤梨花は夫の正文(田辺誠一)と不自由なく暮らしており、わかば銀行の契約社員として優秀な成績を収めていました。しかし、梨花の表情は常に空虚な感じがしていました。そこに大学生の光太と不倫関係となったことで、梨花は初めて満ち足りた表情を見せます。この時点でなぜ光太とそんな関係になったのかよく分かりませんでした。梨花が光太に惚れるような描写がなかった。

しかし、光太の祖父である平林孝三(石橋蓮司)が光太の大学の学費を出さないことに憤りを覚えた梨花は孝三の預金の200万円を着服して光太にあげてしまいます。私はここで梨花に異常さを感じるようになり、全く感情移入できなくなりました。自分のお金を光太にあげるならまだしも、他人のお金を勝手にあげており、梨花の他人のお金で満足を得ようとする片鱗が見えてしまいました。

そこからは梨花は悪魔のように贅沢三昧で、観ていて気分が悪かったです。良心的な顧客を騙してお金を得ていて、梨花はただの詐欺師にすぎませんでした。前述のあらすじで金銭感覚が狂ったと書きましたが、そのレベルじゃなくて、他人のお金も自分のお金だというジャイアンのような狂った感覚でした。

その中で、銀行職員の隅より子(小林聡美)が梨花の異常さに気づき始めます。彼女の仕事に対する実直さ、真面目さがとても良かったです。梨花が異常に走る中でより子だけが銀行員という仕事の本分を理解していて、真っ当に働く姿は清々しかった。銀行の上司がアホ過ぎてより子だけが銀行の良心でした。

終盤に梨花の学生時代の回顧があるのですが、彼女の本質を良く表していて、魔がさしたのではなく、もともと梨花は狂っていたのだと理解しました。

真面目な女性の転落人生と思いきや、元々の人としての狂気を観る作品でした。観て興味を惹かれる内容で面白かったです。

鑑賞日:2024年6月14日
鑑賞方法:Amazon Prime Video
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