福福吉吉

新仁義なき戦い 組長の首の福福吉吉のレビュー・感想・評価

新仁義なき戦い 組長の首(1975年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
流れ者の黒田は大和田組の幹部の楠に代わって対立組織の共栄会の会長を殺害し、7年間刑務所に収容される。出所後、黒田は楠に慰労金の500万円を要求するも、楠は薬物中毒となっていて大和田組がその支払いを保留する。黒田が慰労金に執着して大和田組に絡み続ける中、大和田組の内部では権力争いが起こっていた。

◆感想◆
北九州市を舞台に強大化した暴力団内部の権力争いとそれに関わった流れ者のヤクザの顛末を描いた作品となっていて、主人公が暴力団の権力争いの不確定要素となってストーリーに絡んでいく面白さがありました。

主人公の黒田修次(菅原文太)はどこの組織にも属していない風来坊で、大和田組の幹部の楠鉄弥(山崎努)と懇意にしていた関係で、楠の代わりに敵組織の長を殺害して刑務所に服役します。黒田は今までの菅原文太の演じたヤクザの中でも私欲の強い人物として描かれていて、楠と約束した慰労金に執着して楠を始め、大和田組長(西村晃)を始め、誰彼構わず金銭を要求します。その分、行動原理が分かりやすくて面白いキャラクターでした。

黒田の出所後の大和田組は内部で権力争いが起こっていて、独立を図ろうとする赤松(室田日出男)、狡猾で計算高く組の権力を掌握しようとする相原(成田三樹夫)が幅を利かせていました。相原が次第に頭角を現していき、大和田組を乗っ取っていく展開は彼の計算高さがよく出ていてストーリーに起伏を生んでいました。

赤松の情婦だった綾(ひし美ゆり子)は大和田組の争いの中で相原の情婦へ移っていき、上手く世渡りしていたことも本作では印象深く、ストーリー終盤には綾と黒田が対面する場面もあって本作の権力争いが男だけのものでなかったのかなと思いました。

本作では主人公の黒田が積極的に動くため、襲撃シーンが多くあり、映像として変化の多いものになっていて観ていて退屈しませんでした。ラストの車での追跡シーンも良かった。

これまでの「仁義なき戦い」のシリーズのようにモデルとなる事件など無く完全にフィクションとなっており、それまでのシリーズとの繋がりもないため、気楽に観ることができる作品でした。それでも暴力団組織の内部のいざこざの現実感はこれまでのシリーズ同様のものがあって、暴力や策謀の渦巻くストーリーはなかなか面白かった。

鑑賞日:2024年12月12日
鑑賞方法:U-NEXT
福福吉吉

福福吉吉