金宮さん

ソロモンの偽証 後篇・裁判の金宮さんのレビュー・感想・評価

3.5
ラスト余貴美子さんのセリフ「歳をとればとるほど傷つかなくなるし自分を誤魔化すことだけは上手になる」だけ聞いてしまうと、子どもアゲ大人サゲのストーリーかと思ってしまいそうだけれど実はそんなことないのが好印象。

確かになにかにつけ「自分のせいだ」と責任を感じてしまう主人公達の感受性に少々違和感を感じてしまっている時点で、私ももうそういうことなんだろうと寂しくもなるけれど、正直そんな受け流し力こそ生きていくための処世術なんだと個人的にその必要性は揺るがない。

今作に登場する(一部をのぞく)大人達はそのことを認識しながらも、食いしばって子どもたちとその感受性を受け止め、しかも自分たちも成長しようとしている。松重さんと塚地さんのキャラが特に良かった。やたらと社会人たちを敵視だけするような安直な社会派ジュブナイルとはその点で一線を画す。

ーーーーーーーーー

ただ確かに難点もいくつかあって、不自然な台詞回しや大雑把な演出が散見してしまっている。楽しいときは「あはは!」ってちゃんと言うし、悲しい時は不自然な大雨が局所的に主人公を目掛けて降り注いだりする。その後、トラックに轢かれそうになって「バカやろう!死にてえのか!」までテンプレワンセット。

何故かいくつかの作品で散見される、昭和の時代設定にすればこれら大味が許されるという雰囲気が特に濃かった気がする。

また三宅さんが許されるというプロットは流石に甘いと思ってしまった。現代だとネットリンチに遭いかねないほどの状況だと思うけど、それもSNSのない血肉が通った昭和なら許されるんですよ的にここにも少しだけ安易な懐古趣味を感じてしまう。別に社会的に押し込められる必要はないが反省はしなきゃいけないし、それが垣間見えない。つまり心情描写の不足が否めない。

それは柏木くんにも言えることで、なんかあれだとシンプルにムカつく重度のかまってちゃん。あそこまで至ったバックボーンは各々想像してね、ということかもしれないけどそれにしては上映時間が長すぎませんかね。

ただそんな好みではない演技指導や脚本上の根本的な不満といったハンデを跳ね除けるように役者陣が素晴らしかった。特に藤野涼子さんは『クリーピー』での囚われの娘役、富田望生さんは『モヒカン故郷に帰る』の勝気なブラバン女子で真逆のキャラで良い印象が強かった方々なのだけれど、今作観て最初から凄かったことがわかった。もちろん清水尋也さんは言わずもがな。
金宮さん

金宮さん