ふじこ

ファイブ ある勇敢な女性たちの物語のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

[ コール・ミー・クレイジー ]と言う精神疾患を描いた連続短編集の作品紹介に書いてあった一本。
乳癌をテーマにした女性たちを描くこちらも短編集。Amazonにあったのでレンタルした。

1本目はパールと言う女の子が主人公。母が乳癌で余命幾ばくもないのに合わせてもらえない。
家は親族が集まって、初の月面着陸を観ながらザワザワとした雰囲気、父も落ち着かない雰囲気。
せっかく母のために宇宙飛行士の絵を描いたのに、合わせて貰えないし親族の家に行くように言われてしまうが反発するパールに、家政婦の人がそっと母親に会うように背を押してくれ母の居る寝室へ。
横たわって辛そうだけれど抱き締めて、パールがおばさんが盗んだネックレスを取り返した話をするとそれをパールにくれ、そしてパールが渡した絵にキスマークをつけてくれる。
暗転、成長後この後の主人公たちを診てる乳癌の専門医に。

2本目は女性の結婚式から2年前、癌を告知されるところまで遡っていくお話。
2人のささやかな結婚式から、旅行代理店を開きたいと融資を求めに来るシーン。
更にその前、癌が寛解したと言うのに泣く女性。家も家族も友人も捨ててしまった、死ぬと思っていたからと。
更に前、自分に生前葬で親友だと言っていた女性に一番辛い時に居留守をしたじゃない、と。義理の妹にもとても良くして貰った感謝と、弟は浮気しているわよと。
その前、介護に疲れた夫と病気に疲れた妻の険悪な雰囲気。夫は逃げるように家を出ていく。
ぴったり2年前、乳癌のステージ4だと告知され、働き詰めで旅行にも行ったことがないのに、と。私の人生終わりだわ、と呟き、冒頭の結婚式に戻る。

3本目、ダンサーの女性が家族性乳癌で両方の乳房の切除手術を勧められる。
まだ若い夫婦、セクシーな格好をして踊る自分。胸が両方ともなくなってしまったら、この先どうなるのか。傷跡を見たらきっと嫌いになると。
借金の取り立ての仕事をしているらしき夫は取り立て相手の男に”勝つ為には勝負を続けるしかない”と言われて妻を支え続ける決心をしたようで、自分の髪に拘りを持っていたけれど両方の乳房を切除した妻の元に丸坊主で現れる。
”君は先のことを考える?俺は考えるよ””君はずっと痛い思いをしてきたけど、陣痛はまだだ”
と言って両方の乳房のなくなってしまった妻の体を抱き締める。

4本目、自立したキャリア女性と、変わった母親、普通の主婦の姉。
お喋りでおせっかいで余計な事ばかり口出しする母親に辟易として乳癌を黙っていたけれどバレてしまう。
検査には絶対に来なくて良いと言っていたけれど案の定やってきてまた余計なお喋りでストレスを抱えるも、お互い完璧な人生だと思っていた姉にも悩みがあって、下らないけど本人にとっては深刻で、一人でも平気だと思っていたけれどやっぱり不安になってしまって、帰ると言いながらも待合室に居た母と姉に付き添ってもらう。

5本目、1本目のパールが成長して医師として上記の患者を診てきた後、自身も癌である事が発覚する。
未だに母のことを何も話してくれない父親に母の話をせがむも、どれだけ年を取っても向き合えないのか何故今聞くのかと語らない父に”私も乳癌だから”と言って家を飛び出す。
自宅に戻って、あの頃の自分の年に近い娘に告知しようとするも上手く出来ず、夫婦で寄り添って伝える事に。
治療を終えてベッドで寝ている、あの時の母親のような姿のパール。母の名前を付けた娘にあの真珠のネックレスを渡し、私にはあなたが居る、まだまだ死なないわと伝える。
それから暫く、病院のガラスに貼られた5年再発なしの患者に書いて貰う名前とキスマークのフィルムの前に、前の話の主人公や登場人物が集まっている。(ダンサーだった3話の女性の姿がなく、アンバーと名付けた左の乳房と同じ名前の娘がいる)
そこに現れた父親に、ライラックの香りの石鹸を貰い、お母さんのお気に入りの石鹸で、彼女は夏の匂いがしたと教えて貰う。そして癌を生き延びた娘を褒めて、お母さんに見せてやりたいと言って抱き締める。
そして”昨日から学び、今日を生きる””明日への希望を胸に”と書いた自身のフィルムにキスをして終わり。


次回作である精神疾患の映画の方は症状が色々あって、それらの病気がメインで更に家族からの視点や他の話の登場人物が色んな形で関わっていたりしてバラエティに富んでいたけれど、こちらは一貫して乳癌、でも”乳癌”そのものをフィーチャーしている訳じゃないのが違うところかな。
人それぞれに人生があって、誰も何も悪くないのに勝手に病気になってしまうのは同じ。

映画では8人に1人が癌になると言っていたけれど、今の日本では2人に1人が癌になり、3人に1人が癌で亡くなるのだそうだ。
この映画でも初期の癌から末期の人まで出てくるけれど、本当に定期検診って大事だなぁと思う。
運の問題かは分からないけれど、どれだけ若くたって病気になるし、歳を重ねればなおさらリスクも高まるし。

面倒だなぁ、知らない人と話したくないなあ、婦人科のあの台嫌すぎるなぁ、とか思っている内に病気になって後悔するくらいならやっとけって事なんだよね…。
分かっているのに、どうして何時も他人事のように思ってしまうんだろうか…。
ふじこ

ふじこ