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世界の果ての通学路のくりふのレビュー・感想・評価

世界の果ての通学路(2012年製作の映画)
3.0
【歩こう歩こう私は元気】

キネ旬シアターにて。題材、素材はよいし、子供たちの真直ぐさは逞しくも微笑ましい。でも作りは引っかかりました。生活にカメラが寄り添うというより、カメラに合わせ画を作っている印象が強くて。

ドキュメンタリーより、実在の人物を使った再現映像という後味でした。黒子に徹するフレデリック・ワイズマン作品などに馴染んでいると違和感、残りますねえ。

端的なシーンがありまして。

子供たちがある脅威に襲われて逃げ、物陰に隠れるのですが、予想外の筈なのに、隠れ場所でカメラが構えていて、そのフレーム内にきれいに子供が飛び込んでくる。まるで打ち合わせたように(笑)。で、この脅威自体も映像では一切出て来ない。まるで後から音だけ乗せたように(笑)。

まあ、ドキュメンタリーだって作りの部分はあるでしょうが、こういうのが挟まると冷めるし、全体どこまで演出なのかが気になってしまう。

二者の対話で切り返す等は複数カメラでカバーできるにしても、他にもこれ、仕込まないとできないだろう、というところが幾つもありました。

学校に行くことを絶対視している点も気になりましたが、登場する子供たち本人に向学心があり、彼らは通学しないと学べないわけだから第一歩としてはいいと思った。この先で何を見つけるかは本作がカバーするところではないでしょう。

原題は『SUR LE CHEMIN DE L''ECOLE』。学校に向かう途中で、という意味らしいですが、この通学行為そのものからまず、学ぶことが大きいだろうことはハッキリと伝わってきます。

監督が撮影慣れしているせいか、アフリカのエピソードが一番豊かに伝わりました。荒野の映像が続いた後、キリンやシマウマが出てくると部外者には楽しいですが、通学路としてはかえって危険なんですね。当然その付近にはライオンなど肉食獣が潜んでいるわけだし。ここは身につまされました。

またアフリカの少年が、まだ見てもいない飛行機のパイロットになるのが夢だ、と語るのには頷いてしまった。毎日何時間も地の上を走っていれば、空から世界を眺めてみたい、という気持ちになることはすごくよくわかります。

本作での子供たちと、日本の子供たちを単純に比べてしまうのはもちろん浅はかですが、学ぶ目的が明確でなければ彼らのようにはできないわけで、果たして自分はどうだろうか、と大人も教わる部分があると思います。

<2014.9.1記>
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