スギノイチ

連続殺人鬼 冷血 ~犯罪史上空前の連続23人強姦殺人事件のスギノイチのレビュー・感想・評価

3.8
立件しているだけで8人、自供では20数名殺した戦後最悪の殺人犯。
渡辺護の監督作は数本しか観ていないが、今のところどの映画も嫌な気分にさせられている。
主人公の性格はピカレスク・ロマンなど微塵も感じさせないほど最悪で、少なくとも『復讐するは我にあり』や『TATTOO「刺青」あり』あたりで不快になったり気分が悪くなる人は見ちゃ駄目な感じである。

被害者数が多いので当然かもしれないが、数分に一回殺人か強姦のシーンがある。
凄くエグい場面があるわけではないが、あまりにも非人間的な人物を見せつけられると憂鬱になる。
渡辺護は本作の前年に「新宿歌舞伎町ディスコナンパ殺傷事件」を題材とした『少女暴行事件 赤い靴』を撮っている。
あの映画に漂うドン詰まりな閉塞感にもゲンナリしたが、それが全編に渡って続く感じだ。

時代設定は70年代前半頃のため当時の歌謡曲がわざとらしく挿入されるが、メイクもファッションも当時に寄せてないのでどう見ても80年代にしか見えない。
むしろ、80年代特有の野暮ったい映像と相乗されて返って陰鬱に見える。
これまた陰気な菅貫太郎から虐待を受けて育った非行少年(中山一也)は早々に殺人を犯し、さしたるドラマもなく淡々と凶行を行っていく姿が映されていく。
それでいて消防士の仕事には全力で取り込んでいたらしく、この「それとこれとは別」感がまた恐ろしい。
何人も殺した後でクイズ番組に出演してはしゃいでいる姿は戦慄するが、これが実際のエピソードらしいから驚愕する。

強姦殺人の犠牲になる女性被害者は、なぜか出演している小川菜摘以外は専らロマンポルノやピンク映画の女優が演じている。
芹明香(最初は誰か判らなかった)、水木薫、川村真樹、山本あゆみ、安西エリ、萩尾なおみらが被害者を演じているが、ロマンポルノのそれとは違うリアルな描写は気分が悪くなる。
田中裕子の『ザ・レイプ』あたりを踏襲しているのかもしれない。
江崎和代の殺され方が特に悲惨で、車中で全裸にされていたぶられ「痛い痛い」と命乞いする姿が痛々しい。
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