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悪徳の栄えのHKのレビュー・感想・評価

悪徳の栄え(1988年製作の映画)
3.3
『帝都物語』と同年に公開された実相寺昭雄監督作品。
一時期の日活の脱ロマンポルノ・レーベル“シネ・ロッポニカ”の配給。
マルキ・ド・サド原作の同名小説そのままの映画化ではなく、本作では犯罪者ばかりの劇団が演じる劇中劇として『悪徳の栄え』が出てくる設定。

舞台は昭和10年~、不知火侯爵(清水紘治)の館の宴の席で贅沢な料理を下品に貪リ食う財界の重鎮たちはやはり実相寺組常連の寺田農・石橋蓮司ら。
その周りには裸エプロンで性奴と化したメイドたちがいて、料理を運ぶのが遅れるとムチでお仕置き・・・

脚本は劇作家で小説家でもある岸田理生、もともと『帝都物語』で実相寺と組むはずだったところ、娯楽映画にならないとプロデューサーに降ろされたため、本作であらためて実相寺と仕切り直しになった模様。
本作も一般受けする娯楽作とはほど遠く、人を選ぶマニアックな変態ワールド。

お得意の斜めアングル、ナメ、逆行、広角レンズなどにより、エロ・グロで退廃的で独特な映像美の実相寺ワールドが繰り広げられます。美術は『ウルトラセブン』時代からの付き合いの池谷仙克。
『帝都物語』の特撮で多数登場した操演のカラス(式神)よりも、本作の本物の一羽のカラスの方が、怪しさや禍々しさが際立っていたのが印象的。

また、本作にはオープニングから不気味な少女人形(球体関節人形)が複数登場。
人形作家は天野可淡と吉田良。
実相寺監督は少女の球体関節人形が好きらしく、後のTVシリーズ『ウルトラマン・ダイナ』(1998)第38話「怪獣戯曲」や『ウルトラQ dark fantasy』(2004)の 第24話「ヒトガタ」にも登場しますが、こちらの人形作家は山本じん。

ちなみに上記常連3名はいずれも実相寺が監督したウルトラシリーズにも出演歴あり。
清水紘治は上記の「怪獣戯曲」(ウルトラマン・ダイナ)で主演。
石橋蓮司は「胡蝶の夢」(ウルトラマン・マックス)で主演。
先頃亡くなった寺田農は主演でこそないものの「真珠貝防衛指令」(ウルトラマン)、「夢」(ウルトラマン・ティガ)、上記「ヒトガタ」(ウルトラQダークファンタジー)、「狙われない街」(ウルトラマン・マックス)など最も多く出演。あらためて合掌。
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