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パディントンのJIZEのレビュー・感想・評価

パディントン(2014年製作の映画)
4.0
肌触り絶妙なモフモフ感が最高でしたね。米国の人気児童小説を実写化。日本では今だ未公開な作品です。また,主人公バディントン役の声優も当初はコリンファースが務める予定だったみたいなんですが降板が発表され,現在のベンウィショーに決定したみたいです。まず今作,動物が人前で喋る事を許され縦横無尽に駆け巡るオリジナル世界観として,大まかに『テッド』に大変よく似たお話,と素直に思えた。テッド(テディベア)とは命が吹き込まれてる点で根底は違うも物語が加速する毎に比例し増す饒舌感や愛嬌は非常に良く似た構成だと思う。要は,社会で動物たちの言語化or共存が図式的にも確立される仮想世界で,主人公(動物)が人間世界での実生活を通じ不器用さ故に問題を引き起こすも学び成長し最後には一人前のクマになるお話ですよね。ジャンル的にも真の家族とは?や友情or社会に浸透する成長過程の度合いが比重重く描かれております。愛物語or王道ファミリー映画ですね。

上述しましたが,主人公バディントン自身の外面的な①肌触り繊細なモフモフ感と内面的な②常識逸脱さ,の両者が上手く適合しない"不器用な欠落さ"に醍醐味は尽きると思う。また,両親は立派だけど息子は知識教養が抜け落ち完全なダメ息子設定,もバディントン自身が今後近い将来で成長する見込みがある事を俯瞰的にも示唆させドジ描写や垢抜けない感じを導入部の何気ない10分間で体現する背景描写が良い。秀才設定を否定した事で限りない成長過程を魅せる満足な導入部。ただ,大地震により突如"ある重要な登場人物"をお話から離脱する構成は誰トク⁉︎感が残りました。赤帽子を継続させる為の不可避な問題と言われればそれまでですが。。

また暗黒の地ペルーから筏で川を渡り大都会ロンドンに救命船で漂着する大冒険感も一歩間違えれば死と隣り合わせな不穏が感じ取れ良かった。ルーシー叔母さんの自分は老グマホームに逃げ息子を隠居過ぎるのは早過ぎるという理由1点でロンドンに飛ばす無責任さは恐怖的にも感じ取れた。①赤帽子②非常食(マーマレード)③名札(このクマを宜しくお願いします),の3点のみでバディントン駅で飼い主を探し出すという一発勝負感も後々考察すれば凄い試みだなと思わされた。

カメラアングルの切り替えもバディントンがバディントン駅に着き初めてロンドンの風景を眺める描写は好みだった。ゴミ袋を破き飛び抜けるバディントン視点からカメラアングルが引き気味に映し出され一気に大都会ロンドン全体の空撮に切り替わる。これからバディントンが冒険する舞台の幕が上がる高揚な雰囲気は十分に駅描写周りで誠実に構成されてたように思う。鳩に餌を蒔いた事でラストに繋ぐ着地も円環的に伏線回収し見事でした。

ブラウン家とバディントンの馴れ初めを介す関係性も当初母親メリー以外から嫌悪がられ家に招き入れる事自体も拒まれていた。要は,後見人が見つかるまでの一晩設定。印象悪い状態から名誉を回復するバディントンの現代社会に浸透する成長過程もこの作品の見所に思えた。①耳ブラシを悪利用した事からトイレ脱水②エスカレーターの看板を見間違う天然ぶり③落し物追跡からの常習犯逮捕...etcですね。地理学者協会のアーカイブである冒険家を探し出す為にブラウンが義手装置やホルモン注射を打った等,散々な嘘を警備員相手にまくし立てる描写は今作で1番笑えました。。

敵側マダムディレクターのキャラ配置も絶滅危惧種を狙うトレジャーマニア?ぐらいの目的意識が削がれてたのは否めないんじゃないかな。相棒のグラントともあの顛末だし。麻酔銃の連打やネタばれになる為アレですが顛末含め彼女の動向は後出しジャンケン要素が酷かったですね。剥製目的でバディントンを誘拐するだけ⁉︎感は動機付けとして残念過ぎました。ラストの顛末も自分が剥製くらいになれば大笑い出来てたのかも知れますん。

他面白面でも,バディントン救出途中の窓辺で向かい合い何秒間かキスしてんじゃねえよ!!とか『ミッションインポッシブル4』のイーサンハントが高層ビルを登る際に活用した粘着装置の丸パクリ(BGMも)。タクシー運転手のタクシージョークも笑える範疇じゃなかった。名作のオマージュが随所で多用されてたように思う。

従い,一定以上のワクワクさor波乱さはファミリー映画の平均的範疇において次々に問題を引き起こりバディントンを通じ比較的爽快に描かれる為,変に意識せずとも楽しめる作品だと思います。①赤帽子②マーマレード③ロンドン④鳩,が今作のキーワード。米国では日本公開に先立ち続編が既に決定したみたいなので今作以上の舞台設定を通じる壮大さに期待!!敵側の存在も後出しジャンケン要素が酷くバディントンの成長を描く範囲内で不要でした。あと,母が暮らす老グマホームの描写をもう少し観たかった(本音)。バディントンの語り口調がおとぎ話のような世界観にいざないます。モフモフ感を是非堪能,お勧めです!!
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