皿と箸

複製された男の皿と箸のネタバレレビュー・内容・結末

複製された男(2013年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

ドゥニヴィルヌーヴは、舞台のフィールドが広がってもあくまで限られたコミュニティでの人間関係を主題としていたように思うけど、この作品はさらに舞台も狭まって自分の半径何キロメートルが舞台。
なんなら登場人物も10人以下。

現実と妄想のリアリティラインをとことん曖昧にする事とメタファーとしての蜘蛛が話をわかりにくくしているけど、実は妄想が可視化された話と思うとすんなり。

多くの方が六本木の蜘蛛のオブジェを連想されてるけど、タイトル「ママン」なんですよね。

これは母性とも取れるし、支配のメタファーとも取れる。
人間2人合わせて8本足で蜘蛛になるというのは母性の根源は男と女だという事を示唆的に表している。

ニコラスウェンディングレフン監督のブリーダーやデヴィッドリンチのイレイザーヘッドでも出産を控えた妻を持つ主人公が段々とおかしくなっていく話しを撮ってたけど、男にとって女が妻になり母になる事は自分の抑圧されたリビドーやルサンチマンに向き合わざるを得ないという事なのかな。

所々で街をワイドな画角で撮っていて電線が蜘蛛の巣状になっていたり、街に大きな蜘蛛が出現したりするのは「街」もまた、
支配の象徴になっているんだろう。

意味と意味が重層的にこだまし合う作りは監督の手腕によるところ。
ただデヴィッドリンチのようにポップカルチャーの要素を入れ込む事は今のところ出来なさそうなので、本格的なカルト作品とまではならないと思う。
あくまで限られた層のフォロワーを獲得していくタイプの監督としてこれからもウォッチしていきたい。
皿と箸

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