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スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!のくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【じつは格差BLだったのか(驚)】

首都圏では限定上映だったのが、ぽつぽつ上映館増えたのでみられました。

若手の元気なダンスが楽しめればいいや、ほどの気持ちで臨んだら、ボリウッドらしい捻りがズドンと用意され意外や、引き込まれ面白かった。まあ、作劇はよくも悪くもペライのですが。

カラン・ジョーハル監督作はまだ3本目ですが、今回が一番素直に楽しめました。あらゆる学園ものに、どこかが似ている作りですが、私は『きっと、うまくいく』の変奏と捉えて面白かった。

インド一の超セレブ高校が舞台ですが、金持ちで何不自由なく入ったご子息チームと、学力のみで入った奨学金チームを学校側が分けているというイヤーな設定。ちょっと低カースト向け優遇政策も連想しましたが、この中から金持ち番長と、貧しきイケメンが対立していくというのがインド映画らしいなあ、と思いました。

スチューデント・オブ・ザ・イヤーって、アメリカのプロムみたいな軽いものかと思っていたら、生徒たちにあるスキルを競わせ、勝ち抜いた者にはアメリカ留学を費用含め全面バックアップする、という制度でけっこう重い。

奨学金チームにとっては夢の切符ですが、実は諸刃の剣で…というのが本作の肝。アッパーな宣伝からは予想できなかったので、素直に驚けました。

競技の内容はTVのバラエティみたいで苦笑しますが、これもオチからすると計算のうちでした。全体を覆う軽さは、総体としてはバランス取れていますね。

しかし演技力不足もあるのでしょうが、主人公アビの人物像がちょっと曖昧。ぶれる感じで損しています。演じる平井堅顔シド君のイケメンぶりが、ビジュアルとしてはすごくよかったので惜しい。ライバルやヒロインは分かり易いんですけどね。

脇役はベテランが固めていることもあり、盤石でした。今回アレレと感じて、後で調べたらやはり、カラン監督ってゲイらしいですね。シド君だけでなく、ライバル役キアヌ顔ヴァルン君まで、舐めるようなシックスパックのアップが見せ場になっていて胸焼けしました。この二人の関係は、どうもBL匂わせていますねえ。

逆に、ヒロインのアーリヤーちゃんの描き方はどこかおざなり。彼女も水着でうっふんのシーンがありますが、昭和のCMにこんなのあった気がする冴えなさでした。大磯ロングビーチって大昔はこんなじゃなかったか?

まあ、アーリヤーちゃんという素材そのものがまだ表情、肢体ともぽってりしていてキレがないのですが。かわいいから許せるけどね。

ベテラン勢では、校長センセが魅力炸裂(笑)。お笑いゲイキャラに仕立てていますが、リシ・カプールおじさん、可愛らしく見せるところが巧いです。

ダンスシーンに凄みまでは感じませんでしたが、ファラー・カーンの振り付けは安定感があって楽しめました。イマイチなアーリア―ちゃんでも、クリシュナを惑わすラーダーの舞い(インドでは定番?)ではひと皮ムケたように、蠱惑的なオンナに化けています。

ファラーさんは審査員役でカメオ出演していますね。で、飛び入りで踊っていたのはカジョールさんでしょうか?…でもナンデ?(笑)

若年向け能天気学園ドラマのふりをして、大人の狡さと社会の歪を盛り込み、監督の趣味を何気に暴走させ、しかし学生時代に育てた友情はかけがえのないものだ…と爽やかにオトしています。

なんだかんだと結局は、お腹がふくれたボリウッド佳作でありました。

<2014.7.14記>
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