オトマイム

石の微笑のオトマイムのレビュー・感想・評価

石の微笑(2004年製作の映画)
3.9
円熟のシャブロル。上等なワインのような味わいのサスペンスだった。

ローラ・スメットが、彼女の周囲だけ空気の比重が重いのではと思われるような圧倒的な存在感を発揮している。色素の薄い瞳をもつ切れ長の目がアンドロイドっぽくもあり、蜘蛛の糸で絡めとっていくような粘着質で薄幸な雰囲気がなまなましくもあり。
そして性格がひじょうに怖い。何が怖いって、ふだんは無表情なのに愛を確認できた時とか殺人の話をする時だけは目が輝いてドーパミンだだ漏れの表情になるところ。どう見てもふつうではない。

過剰も不足もない端正なショット、抑えた演出、ラストも文句なし。しっかりとタンニンを含みフレッシュさもあり、余韻が強くあとを引く。作品全般に緊張感が持続しておりとても好み。