くりふ

マダム・イン・ニューヨークのくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【やさしきリベンジ】

や~、潤いました。

ボリウッド特有の辛味がなくスッキリ進む展開がまず新鮮。そして主人公シャシの道しるべとして登場するアミターブ・バッチャンの適度な使い方にチョー感心。前半この辺りで、完全に本作の虜となりました。

しかし一番はやっぱり、シャシ役シュリデヴィさんのキャラと演技。その透明感に、最後はぜんぶ持っていかれた感じですね。

疑問点は幾つかあります。まず、ガウリ監督は母親をモデルにしたそうですが、シャシの芯は強い人物像からは少々ヒッキーが過ぎる気がした。インドこの層の専業主婦では一般的なメンタリティーなのでしょうか?

また家族の描き方も意地悪に寄り過ぎかなと。後半の仕掛けからすると理屈ではわかるのですが、少々デフォルメが過ぎる気がしました。

と、英会話教室のメンバーの、人種的ステレオタイプをもう少し噛み砕いて欲しかった。あれだけの人数捌くとこうなるのかもですが、終わってみると彼らの印象が弱くて残念なのです。

しかし同郷インド人なのに、タミル出身らしい男性とシャシが殆ど接点持たない辺りは成程、と思いました。インドって違う国が集まっているような感じだしね、と言外に伝わりました。

家族の描写と絡みますが、NYでの最大の冒険を、シャシはなぜ、そこまで隠したんだろう? 費用の件は夫に突っ込まれるかもですが、家族、特に娘はシャシがそうなることを望んでいるのだから、言えばいいのに。まあそうしたらお話が成り立たなくなるのですが、もうひと理由欲しかったです。

彼女の、家族への不満からそれが来ていることは分かります。だから私はとりあえず、本作はリベンジ・ムービーだと捉えました(笑)。ラストなんて、形としては夫と娘をやり込めていますからね。しかし、なんて爽やかで優しい復讐なのでしょう!

弱さや歪な点は、作中の爽やか上等な世界観からは気になりませんでした。ラストの大トラブル、あの些細なことが大事件として成立するのはここがしっかりしているせいかと。

しかし、みている間もこの世界の外が気になっちゃって。例えば、シャシとフランス男との絡みは浮いて見えたのですが、この生々しさは異物、外の世界のものだと感じました。まあ、インド娯楽映画のモラルからだと、あのエピソードは落としどころが難しいのでしょうが…。

その他、いろいろ感ずるものはありましたが、シュリデヴィさんの魅力でこういうふうに包み込まれたら、最終的には納得しちゃうんですけどね(笑)。ところで作中の参照映画からすると、彼女ってインド映画的にはエリザベス・テイラーのような存在なのでしょうか?

原題、Vinglishの部分は意味のない単語で、日本語の「なんとかかんとか」の「かんとか」と同じもので、語呂合わせになっているそうですね。冒頭のJAZZ、等でからかわれもする、シャシの発音と絡めているのでしょうか。

しかし、英語を一つの手段としか捉えなかったところは彼女らしくてよかった。帰国したら殆ど使わないんじゃないですかね。在米中、サリーを決して脱がないところにも共感しました。

あ、そうそう「ラジニカーントが鼻の穴で弾丸を受け止める映画」って、ぜひみてみたいと思いましたよ(笑)。

<2014.7.6記>
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