そーた

HUNGER ハンガーのそーたのレビュー・感想・評価

HUNGER ハンガー(2008年製作の映画)
3.6
人間には尊厳がある

まだまだ知らないことがいっぱいありますね。

1980年代のイギリスでは、爆弾テロや暗殺が横行していたそうです。

原因はイギリスからの独立を目指す北アイルランドの武装組織IRA。

当時の首相サッチャーが彼らに対して強硬な姿勢を崩さず、その囚人達を政治犯として認めなかった事で対立が深まります。

そんな背景をベースに、囚人達の抵抗運動にスポットを当てているのがこの映画。

彼らの抵抗は、毛布と糞尿による抗議。
糞尿を壁に塗りたくった独房で裸のまま過ごすわけです。

その描写はかなり不快。
本当にこんなことが行われていたんだと、唖然としてしまいました。

ただ全体的に映像は美しく、セリフは極力廃されているので、視覚に訴えかけてきます。
それはまるで、彼らの無言の抵抗を代弁しているかのような演出でした。

しかし、その抵抗の効果は皆無に等しく、リーダーのボビー・サンズはハンガースト突入を決意します。

その決意を神父に語るシーンは圧巻のなが回し。

このシーン。
二人の男が対比されて描かれていて面白い。

神父はハンガーストを断念するように説得します。
話し合いでの解決を主張する。

かたや、もう一方はハンガーストへの決意が硬い。
行動あるのみという立場。

互いが互いのアンチテーゼとなっている。
例えるなら、キング牧師とマルコムXの関係に似ています。

この対照的な二人が延々17分間議論を戦わせるんです。

カメラは固定でセリフに集中させる手法。
ここまであまりセリフがなかった分、このシーンは特に印象的でした。

そして、ハンガースト突入。
実際に体重を極限までおとして臨んだマイケル・ファスベンダーの役者魂を感じました。

僕、二回この映画を見て一回目は真剣に見たんですけど、二回目はアイスとポテチ食いながら見ました。

目の前では絶食してるというのにです。
でも却って客観的に観れたんですね。

それで僕、ペットにチンチラというやつを飼ってます。
1日経つと小屋は糞まみれ。

でも、これをダーティストライキとは思わないでしょ。

だから、糞尿で抗議ができるのは人間に尊厳という概念があるからなんだと感じました。

この尊厳って、スティーブ・マックイーン作品に共通するテーマなんじゃないかな。

そんな観点で他のスティーブ・マックイーン作品も見直してみるとします。

初監督作品。
彼の原点と呼ぶに相応しい作品でした。

さて、小屋の掃除でもしてこよ~。
そーた

そーた