(特集 ベルリン派の作家たち) ベルリン派代表旗手の一人、C.ペッツォルト監督の幻影三部作最終作。ニーナ・ホス主演。執拗に付きまとう前夫に悩まされながらも、新しい街で新しいパートナーに出会い、新しいキャリアに挑もうとするイェラ。
浮かび上がっては沈み…の繰り返しのような彼女の希望。地味だがきめ細かな映像で丁寧に心理を描写する手法があちこちで見事に決まっている。どうしても抜け出せない彼女の悲運が全て説明されるかのようなラストも見事だった。
ペッツォルトは『東ベルリンから来た女』とよく似た自然描写を既にふんだんに取り入れていた。心情表現の他に、この作品では別の自然描写と合わせ、ある明確なサインを発している。オレンジの剥き方一つでも共感させるとはね。