春とヒコーキ土岡哲朗

I LOVE スヌーピー THE PEANUTS MOVIEの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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強く、やさしく、温かく。

フルCGに変えても、テレビアニメと全く同じ優しさ。電話口の先生の声がうにゃうにゃしていたところで、そうだ、これだった、と以前にテレビアニメを観た記憶がこみ上げる。そんな強烈な「独特」を持ちながら、とても食べやすい。軽快な音楽と動きがあるものの、展開が駆け足しないで、時間がゆっくり流れている感じが落ち着く。キャラクターの描き方はあくまで平面。風景は立体的でいいけど、キャラクターは皆の知っている彼らでいないと。手法が変わるからといって姿が変わることはなく、まるっきり同じ姿でそこにいた。

ドブネズミみたいに、美しくなりたい。チャーリー・ブラウン、いい奴だ。一芸発表会でスベり散らした妹のフォローのために、自分の持ち時間を犠牲にした時点で、こいつは本当にいい奴だ。テストで満点を取った秀才というのは勘違いだったが、「戦争と平和」を読破して見事なレポートを書き上げたのは、彼の実力。テストで満点を取ったのは自分ではないと、皆の前で申し出た勇気も持ち合わせている。赤毛の女の子は、それを見ていてくれた。
どんなに失敗しても、悲観しつづけずにまた挑むから、結果が出る。実はめちゃめちゃにタフな性格。弱者のチャーリーに自分の弱い部分を重ねて見ていると、あれ、チャーリーは弱くないのでは、となってしまう。でも、弱いからこそ、強いんだ。弱いから、手に入れたいもの、近くにいる仲間の尊さが分かり、それらのために強くなろうと思える。チャーリー・ブラウンみたいに、強くなりたい。

スヌーピー、がんがんボケる。面白かった。野球しているとき、雪だるまの中に潜んでチャーリーの投球を撃ち返し、監督の姿に戻って嘆いている姿で裏切りを隠ぺいしようとする。妄想にふけり、他人の家のイルミネーションを勝手に伝っていく。あの手この手でカップケーキを食べ尽くすところが一番好き。一つもバレていないから同じ方法でいいのに、工夫を怠らない。
耳をプロペラにして空中から手を伸ばしてケーキを取るのが、この映画のベストスヌーピー。皆と一緒に学校に入ろうとするなど、ペットとしての可愛げもある。ダンスのステップを犬が教えてくれるところは、ボケだが、チャーリーへの愛。「何ウジウジしている。君は挑戦すれば、できる。できるまで挑戦するガッツがあるだろ」と言わんばかりの、信用を感じる。スヌーピー自身も、パイロットである妄想の中の自分を、現実逃避ではなく、存在するもう一つの自分と捉えている(この映画が、そう捉えている)。理想の自分がいるなら、今の自分を理想の自分に近づければいい。それだけのこと。その姿勢が、ボケのがむしゃら感にも出ている。