菩薩

四畳半襖の裏張りの菩薩のレビュー・感想・評価

四畳半襖の裏張り(1973年製作の映画)
3.9
冒頭の「男は顔じゃない」との文字列に全力で「そうだそうだー!!!」とシュプレヒコールを挙げそうになったが、続く「男の顔はお金」に俺の中の鈴木雅之が「違う、そうじゃない」と静かにサングラスを外した。やれ世相がどれだけ荒れよう、やれ国家が無益な争いに突入しようと、やれ世界情勢そのものが混沌に次ぐ混沌に陥ろうとも、変わらず延々と繰り返されて来た襖の先の床での「あいびき」。ひたすら滑稽でありながら時に哀切も挟みつつ、男と女の組んず解れつの営みの中に生命の発光を見出す。一晩三番勝負の長期決戦に付随する3つのエピソード、膣圧強化、首吊りエクスタシー、出征前突撃訓練。お馴染みとも言える吹き戻しに笑い、人力車の並走に慄き、唐突な蝿捕りでの締めに驚愕する。大正デモクラシーの勃興の影で吹き荒れるアナーキズムの風を感じる。
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