izr

シェイク・ユア・ハートのizrのネタバレレビュー・内容・結末

シェイク・ユア・ハート(2001年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

 マッツさん主演の映画という点、そして話の内容とそれに対する人様のレビューを拝見し気になってつい購入してしまいました。多くの方が結構酷評で主人公に対して性格がクソ野郎的なことを仰っていたのでそれなりの覚悟をしつつ私自身も観終わったらなんて下衆!と言う気満々だったのに、それほど酷くなかったから「おやこの程度か?」と感じました。例えば悪怯れもせず自信満々に浮気していたりとか、二股を楽しんでいたりとかもっと下劣を極めた酷い性格の主人公かと思っていたので……そんな感じで観る前に想像していたのより大分マシな子だったから個人的にはすんなり最後まで楽しんで観ることが出来ました。(またストーリー上、下品な表現は少々ありますが、露骨なベッドシーンがなかったのでその点でも個人的には良かった)

 とは言っても、矢張り主人公は浮気しているわけだから酷い人ではありますが。笑
マッツさん演じる主人公のヤコブは自身の誕生日に同性のパートナーであるヨーレンにプロポーズするが、その日にヨーレンの弟の妻であるカロリーネとキスをしてしまい、互いにまずいことだ良くないことだと思いながらも惹かれ合っていきます。
 勿論そんなヤコブの想いに気付いたヨーレンは彼女を愛しているのかと問い詰め「わからない」とヤコブが否定しなかったことでショックを受け家を出て行くが途中で事故に遭い左目を失ってしまいます。
 この時にヤコブは病室にいるヨーレンに謝罪し自分の所為だと罪の意識を感じる。それでも、カロリーネのことは忘れられず、ヨーレンの入院中に彼女と身体の関係も重ねてしまい、退院したヨーレンにバレた時ももう彼女には逢わないと約束しますが矢張り彼女の許へ行ってしまう。
 そんな中カロリーネが妊娠し(多分ヤコブは相当自分の子どもが欲しかったのでしょうね)ヨーレンとの家を出てカロリーネと結婚する決断をします。
 教会にて誓いの言葉を口にする際、不意に自分がヨーレンに結婚しようと告げた日のことを思い出すヤコブ。そんな想いに気付いたのかカロリーネが何とかなると笑って言って持っていた花束をヤコブに渡し、なんとヤコブは式場から駆け出しヨーレンの許へ向かいます。自分がヨーレンに対してどんな想いを抱いていたのか、それを告げる為に……。
 最終的に、あれはヤコブ、ヨーレン、カロリーネ、その夫(トム)と一緒に暮らすということなのでしょうか。エンディングクレジットでは4人と双方の子ども達と笑い合い映る写真が流れますので……。
 確かに人様の酷評通り、欲しいものは何でも手にしてきたヤコブの行いは褒められるものではないと思いますが、私がヤコブにそこまで酷いイメージを抱かなかったのは(演者が大好きなマッツさんということを除いても)彼を取り巻く周りの人、彼と直接関わるヨーレンやカロリーネなどが今のヤコブのことを受け容れ許していると感じられるから、という理由が大きいからだと思いました。恋愛とかって、まぁ本人たち当事者がそれで良いのだと幸せだと思っているなら良いのじゃないかな、と思うので。
 現代日本は一夫多妻制ではないですし、勿論デンマークもそうではないでしょうが、ヤコブは同性のヨーレンのことも、異性のカロリーネのことも、同じくらいの愛を持って愛してしまっている、ということなのでしょう。面白いのは、最初はカロリーネと義兄であるヤコブの関係を知って激怒していたカロリーネの夫が最終的にそんな彼女とヤコブのことを許容した点です。どういう心境の変化なのか……こういう人はなかなかいないと思う(笑) でも何でも受け容れられるくらい妻のことを愛していたのかな。これも一種の愛のかたちなのか。
 ヤコブの表す愛、ヨーレンの示す愛、カロリーネの想う愛、色々な愛のかたちがあって結果的にたまたま上手い具合に噛み合って集結してこの映画のラストのかたちになったのかなと、そう思うことも出来るかもしれないし、ちょっと考えさせられる映画だなと思いました。まぁこの映画はコメディであるらしいので(その伏線は最初の誕生パーティのシーンで既に張ってあった)私の深読みなだけかもしれませんが。
 賛否両論あると思いますが、同性だろうが異性だろうが、愛してしまったら性差は瑣末なことで、ヨーレンを愛しているのにカロリーネも愛してしまうのは、特に不思議なことでもないというメッセージ性を私はこの映画に感じました。
 恋に落ちるのに明確な理由なんて多分そんなにないのでしょうし。考えてするものは恋ではない、とも言いますし。
 本当の愛って難しいですね。でも本当の愛のかたちなんて人によって違うのは当たり前だと思いますし、きっとそれぞれの人にそれぞれの想う愛があるのでしょうね。それが合致するパートナーと生涯で出逢えたらしあわせなことだなと思います。

 と真剣に考察してしまいましたが、重要なマッツさんの演技についても少し感想を。
 この映画のストーリーが苦手でも得意でも、マッツさんのことが好きなら是非観て欲しい映画だと思います。
 マッツさんは演技が本当にお上手ですね。マッツさんの演じる映画は多数観てきましたが、この映画のマッツさんはもうヤコブにしか見えません。小悪魔的な部分もあり、尚且つ溢れ出る浮気してしまうどうしようもない子感。八重歯を覗かせて笑うお顔が本当に愛らしくて仕方ないです。スケートをしている姿や乗馬している姿も拝めます。そして少々ドジっ子。綺麗に涙も流す。細い腰付きも素敵。17年前のまだ若さのあるマッツさんのこの年代での素晴らしさを是非拝んでください。
izr

izr