なちゅん

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のなちゅんのレビュー・感想・評価

4.3
真実を隠すのは、国家のためであったり世界のためであったりして、時としてそれは正しいことでもあるのだけど、先日見た12 Strongにしてもこのアラン・チューリングの半生にしても、あまりにも非情なように思えて胸が痛い。
エニグマ解読、チューリング・マシン¨クリストファー¨の発明、そして同性愛者であったことと、それ故に失墜させられた社会的地位と早すぎる死。彼の物語はセンセーショナルで、普通ではなかった。彼が普通ではなかったから救われた人がいた。今の時代を不自由なく生きている私もいる。

この物語の悲しいところは、エニグマ解読の事実が、その機密性故にすべて処分された上で隠匿されたことではない。「彼が同性愛者であったというだけで彼の偉業も彼自身も否定された」ことだ。世間からの偏見は拭えなくても、せめて罪に問われるなんてことさえなければ、彼は毒リンゴを選ばなかったんじゃないかと願ってしまう。
彼の名誉は2009年に政府の謝罪、2012年にエリザベス2世の名による恩赦でもって完全に回復されたけれど、彼の生きているうちにそうなれば良かったのにと悔しい。

ベネディクト・カンバーバッチは「天才」を演じる天才なんだろうか。arrogantで協調性がなくて、殴りたくなるような天才。でもベネディクト・カンバーバッチなら魅力的にさえなる。
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