アラン・チューリング。
第二次世界大戦勃発時から、解読不能と言われたドイツの暗号“エニグマ”暗号機。
この解読に取り組んだイギリスの天才数学者の話。
戦争映画とは言え、これは暗号解読に心血注ぐ頭脳派の話。
時折、戦争模様を伝えるシーンはあるけど、基本的には内地で粛々と研究作業に没頭する頭脳派の映画なので激しいシーンは少ない。
“エニグマ”暗号機。毎日午前0時にパターンが書き変わり、毎朝6時に新しいパターンで暗号が発信される。
つまり、毎日18時間以内に解読しないと意味がない。それを超えると毎日イチからやり直し。
気が遠くなる解読作業。解読パターンは158000000000000000000パターンだ、と。
膨大な作業というより、それを18時間以内と言う時間との戦いに。
まさに不可能に近い話。
“エニグマ”暗号機をwikiってみたけど、さっぱりわからない。
回転するローターと打つ文字と出てくる文字のパターンの組み合わせとかそんな感じだけどさらにそこから発信される暗号文からキーを探して逆算するみたいな果てしない解読作業。
とても人間の数と脳で処理できる問題ではないと悟ったチューリングは自動処理マシンの開発に出る。
これが後の“コンピューター”の礎。
つまり彼がコンピューターにおける情報処理技術の祖と言っても良い。
彼は人に理解されず、もともと口達者でもないから、高尚過ぎる彼の狙いや意図を雇い主の軍にも説明できずにスパイと疑われたり、なかなか成果が出ない研究を打ち切られようとしたり、苦難に次ぐ苦難。
途中から少しずつ理解者が出始めて少しずつ解読とマシンの開発が進んでいくが、この映画はそんな彼の天才故の苦悩とアイデンティティがテーマの映画。
彼の性格、頭脳、趣味嗜好、そうした彼のアイデンティティが、この時代とこの最高機密に触れる仕事によって露わになり、その時に周りの彼への待遇が見どころ。
信じられない偉業を達成しながらも受けた処遇など、当時の軍や世論のあり方などもひしひしと伝わってくる。
彼のような人には孤独で、生きにくい世の中だったかも知れない。
そして、彼も最初は数字遊びぐらいにしか思ってなかったかも知れないが、“エニグマ”との戦いを通して見せる彼や内地で働く「現場で銃を持って血みどろになって戦う」以外にも戦いがあることを伝えてくれる映画。
実際に“エニグマ”は彼の功績で第二次世界大戦において結構早めに解読されてる。
しかし、「解読できたことを知られてはならない」というその葛藤。
解読できても次から次にドイツ軍の動きの先手を取ってはいけないジレンマ。
この解読が戦争の終結を早め、犠牲者を減らしたと言われていても、決して晴々とした事だけではない1人の天才とそのチームの歓喜と苦悩の映画。
カンバーバッチの名優が光るが、やはりマークストロングの渋さ。この人のダンディーな男の色気がスゴい。カッコいい。