さわら

毛皮のヴィーナスのさわらのレビュー・感想・評価

毛皮のヴィーナス(2013年製作の映画)
4.5
本作はあなたの映画嗜好を測る、リトマス紙的映画。嫌悪感を抱く人の否定的な気持ちもよくわかるが、個人的な感想としては結構面白かった。大賛成!(リトマス紙だけに)
1番感動的だった(最高に面白かった)のは、80歳ポランスキーのお遊びにガチ妻であるセニエが全力で応えるあたり。深い深い愛を観たね。肉感あふれまくる、セニエ演じる無名女優ワンダの登場シーンからの、舞台上での腹立たしい発声練習。最高に笑えたあとの、物語の主人公として淑女として豹変するあたり。もう最初から最後までセニエちゃんに釘付け!どきどき!
フィクションとリアル、SとMの境界を曖昧にし、2人だけで作り出された濃密な沈殿物をありありと観せられた気分になる。そして唐突なラスト。宇多丸さんもタマフルで言ってたが、“あの映画”に通ずる部分のある(これ必聴)。
終始、おもしろすぎる!って観てたのだけど、笑ってたの小生と斜め後ろのおばちゃんのみ。上映後、妙な親近感からそのおばちゃんに「面白かったですね」と声かけたら、不気味にニヤリと笑うのみ。本作世界の延長線に放り出されたようで、背筋がヒヤリとした劇場体験。

@Bunkamura ル・シネマ