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誰よりも狙われた男のodyssのレビュー・感想・評価

誰よりも狙われた男(2014年製作の映画)
3.5
【中間管理職の悲哀】

スパイものですが、007みたいに格好良く女にもてるスパイではありません。
腹の出た中年男が、上役やアメリカCIAの意向の渦巻く中で、資金をテロリストに流そうとする人物をつきとめ、泳がせてその実態に迫ろうとする、というお話です。

この映画の撮影後急逝したフィリップ・シーモア・ホフマンがそういう地味な中年スパイを演じています。現場で苦労している中間管理職、と言えばふつうのサラリーマンにも何となく分かってもらえそう。

最初は若いイスラム系の青年がハンブルクに現れたところから始まるので、イスラム過激派がらみの話なのかなと思いますが、そこから筋書きは少しずつ意外な方向にずれていきます。この過程で、若い美人弁護士(レイチャル・マクアダムス)も出てくるし、CIAの女スパイも登場するので、色々な線が絡み合ってくるのですが、話としては比較的分かりやすい。

ハンブルクが舞台なのにドイツ語じゃなく英語でしゃべっているのが少し物足りない。ニーナ・ホスやダニエル・ブリュースなどドイツ人俳優も起用はされているものの、あくまで脇役。アメリカ資本の勝利、ってことなんですかね。主人公もアメリカCIAには複雑な感情を抱いているようだけど。

最後が何ともやるせない。まさに、中間管理職の悲哀、って奴でしょうか。スパイじゃないあなたや私にも、どことなく共感できてしまうストーリーと言えるかも知れませんね。
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