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女神は二度微笑むのくりふのレビュー・感想・評価

女神は二度微笑む(2012年製作の映画)
4.5
【ドゥルガーのトリガー】

これは、やられた!大傑作とまでは思わぬが巧い。

観客の先入観をひっくり返すつくりが見事で、個人的なインド映画への先入観も利用されてしまい、気持ちよく裏切られた。こんな昇華気分は初めて。ひとつの想いへと絞り込む結末が鮮やかです!

ナヴァ・ラサという9つの感情特盛連打でなく、一転集中ひとつに重ね合わせている。だから逆に裏表があり、深いですね。

前半は危なっかしい進みで、え、殺し屋まで???…どーよと思いました。

そもそも、臨月らしき妊婦が英国から独りで?の冒頭から怪しく、やがて夫の失踪を追うはずが、幾ら手掛かりとはいえ別人の捜索に熱中し過ぎでは…と疑いMAXとなったところで…え、実は…という、ね!(笑)

マダム・イン・コルカタを演じるヴィディヤー・バーランさん、私は本作同年に出演した『フェラーリの運ぶ夢』セクスィダンサーで先にお会いしましたが…ホントに同じ人?(笑)

本作ではオバサン化一歩手前のさばけた美しさがいいです。演技では、夫への想いがどうも後回しになってないか?…と流れた辺りで、「祝いのサリー」へとぶつける涙のピークが素晴らしい。私も泣きました。…で、騙された(笑)。

人が良すぎるウィル・スミス、みたいな風貌の警官ラナとのコントラストがすごくいいですね。『フェラーリの運ぶ夢』もそうでしたが、草食系なのに骨太な魅力ある男が、インド娯楽映画の主役に目立ってきたようで、この流れは今後、楽しみです。それだけ面白さの幅も広がるだろうし。

ドゥルガー女神がシンボライズされており、物語(原題『Kahaani』もその意)をそちらにどう持っていくかと期待していました。私はマードゥリー・ディークシトさん主演、20年前のある映画との相似を予想していて、実際、主人公の境遇はそちらと殆ど同じくなるのですが…ホント、その先は見事に裏切ってくれました。ああ現代的だ、とも感心しました(笑)。

ドゥルガーは複数の手を持ちますが、複数の想いをひとつに重ねて「指を絞る」、本作の女神には鳥肌が立ちました。しかし女神の決断は、決してひとつの幸福へと実を結ばないところが、本作の苦い広がりです。

終わってみると、シヴァ神を拝むカルト狂団が起こした地下鉄サリン事件を、インドはどう捉えたのだろう?という疑問が起こります。本作ではあえて、Kahaaniの発端となった事件の原因には触れませんが、後から気になりますね。ちなみに神々的には、シヴァよりドゥルガーの方が強いようですが。

<2015.3.8記>
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