ダイゴロウ

非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎のダイゴロウのレビュー・感想・評価

3.6
死後に評価されたって、どこか虚しく、やるせない気持ちを感じてしまう…。

美術教育を受けていないアウトサイダー・アートの代表者であるヘンリー・ダガーのドキュメンタリー作品。

彼が生涯に渡り一人で密かに執筆された代表作である「非現実の王国で」は、300枚の巨大な挿絵(3m以上の長さの挿絵もあるらしい)と1万5,000ページ以上のテキストからなる超超超大作小説である。
美術教育を受けていないがゆえに、ゴミ捨て場などから拾った雑誌・広告などからの切り抜きを多用した実験的な挿絵のアートは独特で、今では多くの人々を魅了している。

そんな彼のライフワークに関するドキュメンタリーであるが、他者に心をほとんど開かなかったが故に、当然ながら彼の謎は謎のままである。周りの人々から語られる情報量も限定的であり、文にしたら一瞬で読了してしまう内容であろう。
敢えてドキュメンタリー作品として鑑賞する必要性は薄かったように思う。

死後に認められる作品って、どこか虚しくて、やるせない気持ちを感じてしまうのは自分だけだろうか…。
一人の隣人が死を向かえる直前の彼に、作品を「素晴らしい」と伝えてくれたことを知れた点は良かった。非常に自分勝手ながら、少し救われたような心持ちがした。
彼にとっては、ただただ気恥ずかしかっただけかも知れないが…。