かたゆき

美女と野獣のかたゆきのレビュー・感想・評価

美女と野獣(2014年製作の映画)
2.5
「美女と野獣」――。
それは18世紀フランスで書かれた、異類婚姻譚の古典。

暗い森の中にひっそりと佇むうら寂れた城の中には、どんな屈強な人間でも一目その姿を見れば悲鳴をあげて震え上がるだろう恐ろしい野獣が暮らしていた。
森の中へと迷い込んだゆく当てのない美女は、そんな恐ろしい野獣とともに暮らし始める。
やがて、美女は野獣の秘められた過去を知り、野獣は美女の純粋な心を発見し、2人の間には次第にとある感情が芽生え始めるのだった……。

恥ずかしながら、ジャン・コクトーが大昔に製作したモノクロ映画も大ヒットしたディズニーアニメも未見のまま、本作を鑑賞してみました。
監督は、かつて『サイレント・ヒル』というストーリーのほうは薄っぺらいB級ホラーそのものだったのだけど、その創り込まれたグロテスクな映像美は目を見張るものがあった作品を撮ったクリストフ・ガンズ。
いかにも彼らしく、本作もストーリーのほうは極めて薄っぺらいものでした。
あまりよく知らないのですが、『美女と野獣』ってもっとラブ・ストーリーであってしかるべきだと僕は思うのです。
そうじゃないとこの全く正反対の美女と野獣という2人に芽生える、お互いの容貌や環境をいっさい越えた〝真実の愛〟というテーマが全く映えないですもん。
対して本作、その2人に芽生える真実の愛がかなりおざなりに描かれてしまっているから、クライマックスの展開がまー盛り上がらないことこのうえない。
唯一の見所と言ってもいい肝心の映像のほうもいまいち冴えていなかったように思います。
『サイレント・ヒル』では、そのあまりにも残酷でグロテスクな映像の中に時折垣間見えるほのかな抒情性がときに芸術的ですらあったのに、監督のあのころのセンスは何処に行ったのやら。
思うに、この監督はこのような男女の繊細な心を描くラブ・ストーリーには向いてないんじゃないでしょうか。
もうここは潔く開き直って、次は完全にグロテスクなゴシック・ホラー作品で勝負してもらいたいものです。
そしたらきっと人々の度肝を抜くような傑作をいつかもの出来るのじゃないかと僕は期待していますんで。
というわけで誰か、クリストフさんに僕がそう言ってたと伝えといてください(笑)。
かたゆき

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