この邦題以外はとても好かった。原題の「シルス・マリアの雲」でいいのに。あやうくアサイヤス作品と気づかずスルーするところだった。
こんなやり方があるんだと思った。カタルシスはない。
終わってすぐ、これはカタルシスのない『オープニング・ナイト』かなと思った。よくよく考えるとカサヴェテスの『オープニング・ナイト』はファンタジーかも、とも思った。
人はどう云うか知らないけど、ビノシュ演ずるマリアが「受け容れた」とは思わなかった。だからおもしろかった。会話の応酬がこれだけあっても、伝わらないときがあり、真意が読めないときがある。答えはない。ただ蛇行する雲のように流れてく。
もう一度観たい。そして劇中劇「マローナの蛇」の上演シーンを観てみたかった。クリステン・スチュワートを相手にビノシュが台詞の稽古をするシーンは、現実との境界がかなり曖昧になる魅力的なシーンだった。