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ラブ&マーシー 終わらないメロディーのTOTのレビュー・感想・評価

4.0
思春期にリアルタイムではないけどビーチ・ボーイズを聴いていて、ビーチ・ボーイズ以降のブライアン・ウィルソンの人生もなんとなくしか知らなかった。
でも88年のソロ作『Brian Wilson』が好きで、特に一曲目の「Love And Mercy」が大好きで、同タイトルのこの映画が公開されると知って絶対見ると決めていた。
素晴らしい。素晴らしいです。
こんなに泣くと思わなかった。
冒頭、「I Get Around」が流れたくらいからずっと泣いていた。
数々の名曲と、スタジオ収録のシーンは本当に昂揚する。

ブライアン・ウィルソンが制作に没頭しながら徐々に精神の混乱深めていく60年代をポール・ダノ、80年代をジョン・キューザックが演じていて、とにかく2人の演技が素晴らしかった!
余計なこと言うと、わたし卵顔が苦手でジョン・キューザック作品避けてきたんで、まさか今になってこんなに泣かされるとは。ごめんジョンごめん。
あと、ブライアンの恋人メリンダを演じたエリザベス・バンクスも強くて美しくて素敵。

ブライアンとポール・ジアマッティ演じる医師ランディの支配関係は、束縛による保護・所有しようとする父と子のようにも見えたし、ブライアンがその関係に身を置くことで実の父親との確執を清算しようとしてるようにも見えた。また、ポール・ジアマッティが上手いし恐いんだ、これが。

見る前はポール・ダノが後年ジョン・キューザックにはなんねーだろ!って思っていたけど、実際見ると2人の役者が演じるブライアン・ウィルソンのオムニバスみたいな感じ。
共同脚本のオーレム・ムーヴァーマンはボブ・ディランを複数の俳優が演じた『アイム・ノット・ゼア』の脚本だったので納得。
細かくタイトな編集、素晴らしい音楽と音響、何より時代が変わっても消えない彼の苦悩によって、2人の俳優が作りだすブライアン像が交錯しラストに結実する。

想像だにしなかったブライアンの困難の日々を知った後に、「Love And Mercy 」が流れてとどめをさされ、バカみたいに涙が出た。
Love and mercy that's what we need tonight!
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