へちまびと

フューリーのへちまびとのレビュー・感想・評価

フューリー(2014年製作の映画)
3.8
プライベートでは絶対仲良くなれないが、生死を共にするに足る信頼できる仲間、という、矛盾するようでいて、意外とわかる関係性を描いた映画。

戦車長ドン・コリアー"ウォーダディ"(ブラッドピッド)をはじめとするM4戦車フューリーの仲間たちを新兵ノーマン(ローガンラーマン)の視点から描写する。

バイブル(シャイアラブーフ)とクーンアス(ジョンバーンサル)はどうでもいい話でよく揉める。それをまとめて笑い話にするドンの言動は、一見下世話なようだが根底に帝王学が感じられる。他にもバイブルが唱える聖書の一説が何なのか知ってたりと、実はドンは学のある人物ということがわかる。

占領地の民家でメシ食う時の雰囲気はもう最悪で、戦地ということを差っ引いても絶対ここにいたくないわ〜という澱んだ空気を作るフューリーチーム。

しかしひとたび戦闘となればドンの指示のもと、全員が精密機械の歯車のように噛み合って良い仕事をする。
こういうギャップがこの映画最大の見どころだろう。

逃げなければ死が待っているという状況にあっても、「ここが俺の家だ」と戦車を叩くドン。(予告編にもあるシーン)

ここだけ切り取って見ると「は?」という感じだが、このチームの「平時は嫌なやつの集まりだが戦ってる時は輝く」という特性と、根は生真面目なドンの性格を見せられた後だと、さもありなんという感想に変わる。

何にせよ映画としての見応えは十分。WW2の戦車戦の概要を映像で掴める資料的価値も高い。