みんと

マルケータ・ラザロヴァーのみんとのレビュー・感想・評価

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
4.4
最近、やたら気になるチェコ映画。
観たくて観たくて!やっと出会えた今作。

13世紀のボヘミア王国を舞台に、宗教と部族間の抗争に翻弄される少女の数奇な運命を描いた叙事詩的歴史映画。

領主の娘マルケータは、修道女になる未来を約束されていたが、父と対立する騎士の息子・ミコラーシュと恋に落ちてしまう。やがてふたりの恋は、強大になっていく王に抗い対立する親同士の激しい争いに巻き込まれていく……。

コレは時代劇のイメージを覆す!まるでクロサワ的ダイナミズム(戦いのシーンはまさにソレ)とスタイリッシュな映像によるヨーロピアン時代劇とでも言った印象。
そして、チェコ・ヌーヴェルヴァーグの熱量と大胆さの中の緻密さも感じる。

判りやすいキャラクター設定とストーリーの日本時代劇と比べると、何とも意味不明で散文詩的なチェコ時代劇。スピリチュアルなメタファーで覆い、大外から攻めてくる描き方は難解でもある。…ココは歴史と宗教の知識が有る無しで理解の深さは大きく異なると思う。ラブストーリーの部分の複雑さも然り。

フレームいっぱいの表情、構図、アングル、広大な引きの映像、縦横無尽のカメラワーク、神々しさすら感じるライティング…。どれをとっても息を飲む。映像が主役、映像に語らせる映画でもあった。

更には、荘厳で重厚な音響は作品の格を押し上げ、何と言っても、マルケータのオーラには吸い込まれる程だった。

個人的にはタル・ベーラの『サタンタンゴ』を鑑賞時にも似た衝撃。ただただ圧倒的な画力に身を委ねるだけでも得られる満足感が大きく、もちろん長尺も気にならない作品だった。

早々に最高傑作を観てしまったのは勿体ない気もするけれど、今作で更にチェコ映画への興味は深まるばかり。

因みに、今作は中世を忠実に再現するため衣装や武器などの小道具を当時と同じ素材・方法で作成し、極寒の山奥で当時と同じように暮らしながら548日間にもわたる撮影を敢行したとの事。そして製作には10年を費やしたと言う。
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