もりいゆうた

バクマン。のもりいゆうたのレビュー・感想・評価

バクマン。(2015年製作の映画)
4.3
学生時代、ずっとバクマンに支えられてきた人生だった。

高校生の頃、第一志望の大学の受験教科に小論文があったのでそのときの書くモチベーションはバクマンによっていつも高められていたし、

受験後、大学在学中に出版の賞を受賞するという目標を決めてずっと生きていたので、上京してあまり友達もいない中、頑張れたのもバクマンのおかげ。最高と秋人がいたから。

久しぶりにマンガを読み返したところなので、劇場で見たぶりに映画も見返してみた。


バクマンへの思い入れと思い出はとにかくたくさんある。
(誰も読んでいないであろうここで勝手に振り返り、日記として残しておこうと思う)

例えば、2014年、24歳の頃、初めて賞を受賞し、集英社の編集長から「うちで出しませんか?」とオファーをもらった。

12月の暮れ、初めて行く集英社はバクマンの世界そのもので、本当にワクワクした。

「僕、めちゃくちゃバクマン好きで、ずっと支えられてきたんです……!」

そう言うと、編集長がとても喜んでくれて、

ちょうどその頃、バクマンの映画の撮影を集英社内でしていた頃で、わざわざすべての階を案内して見せてもらえた。
(ただのファンなのでその説はありがとうございました、とても胸が踊りました)


30分後、やっと席につき、僕の書いてきた企画書の話になった。

真城が服部さんと初めて会ったとき、この編集はできる人なのかとずっと試していたように僕もジャッジしていた。

まず編集長に「本はファンがいないと売れない。今フォロワー何人いる?」と言われた。


正直言うと、ださいな、と思った。

この人は自分の目で企画を判断できないんだな、だめだな、と思った。

違和感しか覚えず、その話を他社のベストセラー編集者何人かに話すと全員に失笑された。

「集英社は本を作りたくて入る人いないからしょうがないね」

「大丈夫、ファンなんていなくても、本は面白ければ売れるぞ」

と力強く言われた。


「マンガは面白ければいいんだ。面白いものは連載される。当たり前だ」

バクマンの佐々木編集長の台詞を思い出した。

この台詞の後はこう続く。

「だが君たちの作品は面白くない」


そう、僕の企画も面白くなかったのだ。


次の年、2015年(25歳)は、成功と挫折、をいっぺんに経験した年だった。

第一志望の大学、第一志望の企業に内定、そして在学中に受賞。

二十歳以降、ずっと負け知らずでやってきて、大人になってから初めてちゃんとした挫折だった気がする。

何度書いても本(文章)が面白くならなかったのだ。没、没、没、没。没の嵐。

もうこの先どうしたらいいのかわからなくて本当に不安になった。

『劇場版 バクマン。』はもちろん見に行ったものの、苦しくてあんまり見れなかった気がする。



バクマンの映画を渋谷のTOHOシネマズで見てから、もう6年が経つ。

僕は未だに本を出せていない。

読者の方に応援してもらうために、最近ではそれを逆手にとってこの苦労している過程をネタにしていこうとしているのだけれども(いわゆるプロセスエコノミーってやつかな)、

今回、久しぶりにマンガを読み返して、今まで一度も共感したことなかった中井さんに感情移入してて驚いた。いや、苦しくて中井さんが見ていられなかった。


成功と挫折をいっぺんに経験してから6年、人生経験を重ね、技術ははるかに向上した。やっと、書きたい文章も書けるようになってきた。

あのときの挫折なんて挫折じゃなかったなぁなんて今になって思う。

会社に入ったばかりの新卒1年目の子が先輩より仕事ができなくて悩んでる感じ。そらそうでしょ、だって1年目なんだもの。エース社員よりできなくて当たり前。挫折でもないし、悩む必要なし。そういうものって割りきってよし。

それに成功の前は必ず挫折が付き物だということも知った。ジャンプする前は必ず一度しゃがんでいる!なんてね。


早く亜城木夢叶になれるよう今日も本を読み、そして書く。それだけです。

(以上、今日の日記でした。数年後、また見返したときに楽しく振り返られますように)