ハレルヤ

あの日の声を探してのハレルヤのレビュー・感想・評価

あの日の声を探して(2014年製作の映画)
3.9
1999年の第二次チェチェン紛争による悲劇を取り上げた戦争ドラマ。

両親を殺されたショックで声を失ってしまった少年ハジ。姉弟とも生き別れ、一人で生きていく中、EU職員のキャロルと出会ったことで、希望を見出だしていく物語がメイン。

その一方で普通の青年コーリャも、ロシア軍に入隊したことで、訓練やいじめで人としての心を失っていき、凄惨な戦場で人殺しに染まっていく様子も平行して描かれます。

冒頭から心が折られそうになるほど、視覚的にも精神的にもキツいシーンばかり。この時点で本作のカラーを感じ取れます。

淡々としているも確実に引き付けられる内容で、ドラマチックな演出も何もないところにリアリティがあります。

言葉を失ったハジがキャロルとの交流で、次第に心を開いていく流れが感動的ながらも静か。
後半まで喋らなくとも、表情だけで悲哀を存分に見せてくれるハジ役の子の演技力も特筆レベルの素晴らしさでした。

尊厳を踏みにじられ、人間性が崩壊してしまうコーリャ役の人も凄い演技。「フルメタル・ジャケット」を思い出させる軍隊の狂気の渦が、彼の姿を通して映し出されています。

複数の視点で描かれるチェチェン紛争の悲劇。
日本ではあまり実感が湧かない出来事ですが、戦争で一番犠牲になるのは若者と子供。それを克明に表している秀作。

戦争の容赦ない現実を突きつけるかなり重い内容なので気軽には見れませんが、一見の価値はある作品だと思います。
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