odyss

ターナー、光に愛を求めてのodyssのレビュー・感想・評価

ターナー、光に愛を求めて(2014年製作の映画)
3.5
【美しい絵画、醜い人間(模様)】

19世紀の英国画家として有名なターナー。その後半生を描いたのがこの映画。

主役ターナーを演じるティモシー・スポールが、全然美男じゃなく、愛想も悪く、実に映画の主役らしくないのが、まあよろしいんじゃないでしょうか(笑)。

筋書きも、あまり分かりやすくありません。多分監督は、この映画を典型的な物語様式にしてしまうことを避けて、ターナーの人生を断片的に示し、その先で物語を紡ぎ出すのは観客各自に任せた、ということかも知れません。

女性科学者とのプリズムをめぐるシーンなども、のちの印象派になると光が絵画の原理であることを科学的に意識しながら絵画理論を打ち立てようとするので、その前哨戦(?)というような位置づけなのかな、と思いながら見ていました。私は美術史には詳しくありませんけれど、光を描くという点でターナーと印象派は共通部分がある。

女性関係も結構乱脈ですね。うらやましい(笑)。

物語が断片的なのとは対照的に、映像は美しい。ターナーの絵画に対抗するかのように、ピクチャレスクな風景映像が多数出てきます。ターナーという人間の猥雑さと、風景の美しさが、矛盾多き世の中を暗示しているかのようです。或いは、美しい芸術の背後にはウジ虫が・・・ということなのかも知れません。
odyss

odyss