nousagi

雪の轍のnousagiのレビュー・感想・評価

雪の轍(2014年製作の映画)
3.7
カンヌ国際映画祭パルム・ドール大賞の今作は、チェーホフの著作を元にした人間ドラマ、会話劇でした。


カッパドキアに佇む洞窟ホテルの経営をしている元舞台俳優のアイドゥン。
若くて美しい妻との関係はうまくいかず、出戻ってきた妹ともぎくしゃくしてます。

裕福で悠々自適な生活をしてるけど孤独な登場人物たち。
孤独を埋めるかのように、アイドゥンは執筆活動に、妻は慈善活動に励んでいます。

ある日、家を貸していた家族と家賃滞納問題で恨みを買ってしまい悩みの種になっていきます。
問題が解決しないまま季節は冬へ。
観光客も途絶え雪で閉ざされた場所。
閉塞感が覆い尽くしています。
そんな状況下では、普段気にならないような相手の欠点が目に付くようになります。
相手を思いやることも忘れ、感情をさらけ出す人々。
辛辣な言葉の数々。
相手を責めたてる身勝手な言い分。
緊迫感から見ている方もはらはらします。
会話によって、それぞれの心理や人物像がくっきりと浮かび上がってくるのがおもしろいです。

すれ違ってしまった夫婦の関係はどうなってしまうのか…。

長く一緒に生活をしているとお互いの関係を見つめ直したり、関係を変化させるのは大変なことなのかもしれませんね。

男と女、若さと老い、貧困と裕福、善意と偽善など、対比するような形で人間の心理が鋭く描かれています。
人間の内面を掘り下げた味わい深い作品。
カッパドキアの美しい風景も魅力の一つです。

ただゆったり話が進んで行くので、見る人によっては根気がいるかもしれません。196分の作品…ちょっと長かったかなぁ。
nousagi

nousagi