松井の天井直撃ホームラン

バードピープルの松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

バードピープル(2014年製作の映画)
-
☆☆☆★★

不思議なファンタジー作品。

映画は2部構成になっているが、前半と後半では作風が全く異なっており、観ていてその違いには狐につままれた様な感じを抱く。

エンジニアの男が決断する前半の話は、最近公開された『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』を彷彿とさせる携帯電話でのやり取りが何度となく続く。
この際に電話の相手の描写が映るのだが、これはどうなのだろう?
『オン・ザ…』は全編一人芝居とゆう実験形式を貫いた作品だった為に、結果として観客側に想像力を働かせる効果があったのですが。この作品の場合、個人的にはその様な効果も感じ無く、ただダラダラと続いている印象でした。
その後の奥さんとのインターネット回線を通した確執の罵り合いもかなりしつこい位ではありましたが、まだ人間の本質:本性を描く意図が有ったのならば納得の行くところでした。

そして映画は後半に突入するのですが。その突然の変化には、観ていて最初はかなり戸惑う事しきり。

それにしても、カメラが対象に対して追い掛ける場面は、おそらく大半がCGを駆使し、止まっている場面では調教を施しての実写映像なのではないか?…とは思われるのですが、一体どうやって撮影されたのか?あまりにも出来すぎていて驚きの連続でした。

とは言え、余りに唐突過ぎるのはどうなのでしょう?(作品の中ではあの有名なお伽話を意識する台詞も有りましたが)
ファンタジー映画に「何故?」を求めるのはナンセンスなのかも知れないのだが。
男の場合だけ、心の葛藤がナレーションで展開されていて、「これで納得して欲しい!」的な描かれ方になっているのもどうなのでしょう?。
それでも後半の飛翔シーンは、それまでの流れが180°変わる為に、高揚感に溢れているので魅力的ではありました、

この二人の男女が絡む描写が前半部分に何度か描かれていなければ、最後のエピソードが活きて来ない気がします。しかし本来この二人は決して顔を合わせる事は無いはずのお客と清掃員とゆう間柄。
彼女にとって、担当する部屋のお客様の顔は知らずとも、その生活振りで知りたく無くても色々な事が目に飛び込んで来る仕事。決して覗き見している訳では無いのだが…。
お互いに“変わりたい“とゆう願望に溢れていたからなのか、映画のマジックによって二人は【再開】を果たす。

都会に住み、あくせくと働く現代人の孤独と焦燥感を描いた佳作と言って良いのかな?とは思いました。

(2015年10月1日/ユーロスペース/シアター2)