へちまびと

アメリカン・スナイパーのへちまびとのレビュー・感想・評価

アメリカン・スナイパー(2014年製作の映画)
3.4
大変一方的な視線で作られているが、まぁエンターテインメントとしては正解という感じがする。ゼロダークサーティあたりと一緒に見るとバランス取れるかもしれない。

神の存在についての質問に主人公が「神がどうしたって?」とけんか腰になるあたりとか、テキサス出身の敬虔なカトリック信者感がよく出ている。

無意識なのかもしれないけど、クリントイーストウッドの映画はやっぱり骨格が西部劇なんだよな。最後は男と男の宿命の対決になり、雌雄を決するという話に帰着する。

劇中、敵対勢力を「野蛮人」と呼ぶシーンが頻繁にある。アメリカ人の心理の根っこには(人種と言って世間でイメージされる範囲とは若干違うものの)人種差別意識が根強く残っているんだなぁと思った。
この矛先がかつて日本に向かっていたわけだ。

この「人種差別」は、なんとなく、被差別グループから女子供老人みたいな弱者が場合によっては省かれる印象を受けるんだよな。もっとも、これはクリントイーストウッド個人の「正義」なのかもしれず、一般化はできないかもしれない。

俺たちは正しいから(根拠なし)、敵対するやつは悪だし、ひれ伏す奴は仲間だし、弱者は守るし、自ら矢面に立って仲間や弱者を助けるのが真のアメリカ人だ、強くあれ、という感じだろうか。やっぱり西部劇になる。しかしこのカウボーイ的無邪気さこそアメリカの原動力なんじゃないか。

戦って勝つ勝者こそ正義だ、戦って負けるやつはまだしも、戦わない奴はクソだ、みたいな価値観も垣間見える。「最近の世の中は女々しくなった」と言うクリント・イーストウッドのぼやきと重なる。