まさなつ

だれのものでもないチェレのまさなつのレビュー・感想・評価

だれのものでもないチェレ(1976年製作の映画)
3.9
ここにはおまえのものなんて、何もない、、

冒頭、素っ裸の小さな女の子が草原で牛を追う、一見のどかなシーンから映画は始まります。

彼女は服を汚したのかな?川か池で泳いでた?と思ったのですが、家に帰っても服を着る様子がない。他にも子供がいるがみんな服を着てる。あれ、おかしいな?と思ったら、どうやら彼女だけ実子ではなく、施設からもらわれた子。それにしても、服も与えてもらえないとは!
この始まりからいやな予感はしたが、そこからの養母養父の彼女への仕打ちといったら、酷過ぎる。ここで養母が彼女に言うひと言が最初の言葉です。
ある時、さすがに耐えられなくなって家を出るんですが、7歳ぐらいの子がひとりで生きていけるはずもなく、また施設へ入り他所の家に貰われていく。どうやら、施設から引き取るとお金をもらえるらしい。だから引き取る方も、養女にしたいわけでなく、お金と労働力欲しさなんです。まさに、奴隷です。
今度の家も悲惨です。とにかく鬼ママがすさまじい。

もうこれ以上書けない、、チェレの運命があまりに過酷すぎて、、。

1930年頃のハンガリーが舞台。当時、ハンガリーは第一次世界大戦に負けて、国は悲惨な状況にあったらしい。だから、国自体が貧しく、子供の、それも孤児の人権どころではなかったようです。だから、彼女のような子供はたくさんいたそうです。

なんとも救いのない映画ですが、今もチェレのような子供が、この世界ではたくさんいるのでは、と思うと、目を背けていてはいけないとも思います。

チェレを演じた少女は、これがデビュー作とのことですが、とにかく素晴らしかったです。
まさなつ

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