けまろう

囚われの美女のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

囚われの美女(1983年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

『囚われの美女』鑑賞。アラン・ロブ=グリエ二作目。
二人の対照的な女性の間で揺れ動く男の話。ますらおぶりなバリキャリ風の女上司サラとたをやめぶりで魅惑的なマリーアンジュ。数年前に殺されたはずだというマリーアンジュ(の亡霊)と出会ってから、男の運命は狂い出していく。『ダゲレオタイプの女』が如き幽霊譚特有のスピリチュアルな雰囲気のある作品。
象徴的なのは、怪我をしたマリーアンジュ(の亡霊)を古い洋館に運んだ際、取り巻く男たちとのシーン。医者を呼んでくれと訴える主人公に、聞く耳を持たず女性を性的な道具かのように振る舞う紳士たち。主人公の後の回想曰く、「言葉は同じなのに話が通じない」紳士たち。当時にしては一歩踏み込んだフェミニズムではなかろうか。
そして、本作のタイトルでもあるルネ・マグリットの『La Belle Captive(美しき捕虜)』の絵画に洋館で遭遇し、それ以降象徴的な寓意として要所に挿入され、その絵画の世界観は実写でも表現される。
絵画では描かれることのないカーテンの奥はどんな様子だったのか、マリーアンジュが殺された浜辺であると話は進んでいくが、最終的な結論は兵士に向かって主人公の銃殺指示を出すサラの姿であった。誰が捕虜か、という点では正にコペルニクス的転回がごとく真逆なのである。
そしてそれは夢が覚めたラストシーンで死神によって現実となる。高度な予知夢と言えばそれまで。ただ、個人的には正しきな恋人(妻?)であるサラが居るにも関わらず、対照的な女性に心が浮いてしまった男性悪への鉄槌であるようにも思われた。先のコペルニクス的転回要素も含め。
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