けまろう

西鶴一代女のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

西鶴一代女(1952年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

『西鶴一代女』鑑賞。男に振り回され松平家の内縁の妻から街娼に至るまで激動の人生を生き抜いたお春の一代記。原作は井原西鶴の『好色一代女』で日本の古典を徹底したリアリズムで描く溝口健二の真骨頂が現れている作品。溝口ならではのロングショットは顕在で目の離せないカメラワークだ。
冒頭の五百羅漢像から過去の男たちを連想されるシーンや京都御所の往来のシーンなど、序盤から素晴らしいシーンが連続する。男の求めに応じては何かと問題が起き追い出され身を堕としていくお春。男性悪による女性の苦難を描くことの多い溝口だが本作が異なるのは「女性の嫉妬」も大きくお春の人生を狂わせていくということである。松平家の嫡子を産めなかった正室しかり、女中として住み込んでいた嘉兵衛の妻しかり、女性(というか人間の)の正室という確固たるポジションへの縄張り意識を持って淘汰されるのだった。
落ちぶれに落ちぶれたお春に最後吊るされた蜘蛛の糸、松平家の当主が亡くなり後継ぎの嫡子と住んでほしいという。観客にも安堵の気持ちが流れただろう。しかしそこは溝口健二、悲劇に持っていくあんたは鬼か!
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