フジタジュンコ

あなたがいてこそのフジタジュンコのレビュー・感想・評価

あなたがいてこそ(2010年製作の映画)
4.2
ラージャマウリ印の安心感よ…!

2009年「マガディーラ 勇者転生」と2012年の「マッキー」の間に挟まれた小品ながら、歌とダンスが最強に楽しい作品。ラージャマウリ監督、映画うまお(byてらさわホーク)すぎる……

序盤に伝説の「仕事をなくした」が披露されます。自動車がなぜか空中を舞ってぶつかり合う中で、クビになった悲しみをヒゲのおっさんが歌って踊るのです。もうこれだけでも見る価値があります!

名誉のための殺し合いと世代を継いだ復讐がストーリーの発端で、実際にこのような抗争が起きている土地が舞台だけに、暴力的なシーンがほどよくまぶされ、サスペンスとしてもよくできています。
主人公ラームの相棒の「しゃべる自転車」のオチも良い。エンディングはメイキングになっており、NGシーンや、演技指導する監督も見られるので最後までずっと楽しいです。
そして何より、ヒロインのアルパナちゃんが可愛すぎて私も恋に落ちそうでした…よく笑うし、コロコロ表情が変わってとっても魅力的。

「RRR」に”男性中心的で、白人女性コンプレックス丸出し”などの批判があるようですが、本作を見てもおわかりの通り、ずっとラージャマウリ監督は自立した女を描いていて、それを抑えつけようとしている男たちを批判的に描いているのですよね。アルパナは絵を描くのが好きでなかなかの腕前、ひとりで夜行列車にだって乗っちゃう、なのに家族や親族は「お絵かきなんかやってないで早く嫁にいけ」とバカにする。ラームだけがアルパナの大切な「絵」を守ってくれて、評価するんです。そらこんなヒゲのおっさんでもアルパナちゃん、恋に落ちますわ…! ファンなので贔屓目に見ているところはもちろんあると思うのですけどね。あと監督は白人女性コンプレックスじゃなくて美女のプルプルしたお腹が好きなだけですね。

本作は「荒武者キートン」(1923年)から着想を得たとのことなので、本家も見たいと思います。