そーいちろー

靖国・地霊・天皇のそーいちろーのレビュー・感想・評価

靖国・地霊・天皇(2013年製作の映画)
4.0
靖国神社、天皇制、戦後処理の問題という司法言うところの高度に政治的な問題にあたる点を一つのモチーフとしているため、その点ばかりが前景化されているが、これはある種のセルフドキュメンタリーである。監督、そして我々日本人が戦後を生きていく中で、肯定、否定という二分法とは遥か遠くの地平で内面化されている、内なる天皇、あるいは戦後と向き合った映画と受け取った。小児ポリオの影響で24時間の介護を必須とするキムマンリさんの踊りが、あらゆる宿命に縛られ、上手く身動きを取れなくなってしまった私達、特にそれは左右の衝突の場に設えられてしまった感のある、靖国神社で顕著になって現れる問題だ。ただ、あまりに本作を政治的に扱う人間が多く、ゲンナリした。これはジガヴェルトフ集団時代のゴダール、ラウル・クタール等が、ある種その純度を突き詰めた結果、痛快に視えてしまう、その素晴らしさと同じように、映画として、芸術として、表現として高い地位にある。インサートされる手紙や、主張、合間に挟まれる象徴的イメージ。そのカラフルさや艶やかさが、この映画の課題意識を見事に映像に落とし込めており、同じ課題意識を抱えるものたちに、天皇という、はからずも我々自身の象徴を焼却し、昇華しようとする行為に触発される事であろう。
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