そーいちろー

ブラインド・マッサージのそーいちろーのレビュー・感想・評価

ブラインド・マッサージ(2014年製作の映画)
3.7
可視/不可視、精神/肉体、そういうものを盲人達が南京で運営する按摩店の興亡を通じ描く。語りは三人称。主人公格のシャオマーは幼い頃に突然視力を失い、自殺未遂をしながらも生きながらえ、成長し盲人達の按摩店に勤める。盲人ゆえに思う事がいかずとも、それぞれの形で愛を求める盲人達の日々をロウイエらしく徹底的に個人との関係において描く。シャオマーは按摩店のマドンナ的存在である都虹から好意を得ながらも、それに気づかず、深圳から来た盲人カップルの女性の孔さんに性的衝動から情動を抱く。炭鉱の爆破事故で視力を失い、売春宿通いが趣味の先輩に連れられ売春宿へ行くシャオマー。そこであてがわれたマンという売春婦に性欲から、そして次第に本当の愛へと変わり、今風に言えばマンに「ガチ恋」する。そして、マンもシャオマーに惹かれていく。そして、あることをきっかけにシャオマーの視力が戻り、それまで音や匂いでだけしか感知できなかった自分の周りの世界を知り、そして最愛の人であるマンに会いに行く。この視界がぼやけた状況から徐々に鮮明になっていく様子が素晴らしい。物語はラスト、失踪したのちに街のハズレでマンと二人で小さな按摩店を経営するシャオマーの様子を映して終わる。按摩とは要するに誰かの苦痛を和らげるために行う施術で、それは単に物理的だけでなく相手の心理も見抜くことで本当に相手に「触れる」行為となり得るのだ。ただひたすらに愛することに懸命な人間を映し続けるロウ・イエの真価が発揮された一本だった。
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