そーいちろー

ファースト・カウのそーいちろーのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.7
不思議な映画。決してハッピーエンドでもないし、かと言ってバッドエンドでもない。西部劇であり、カウボーイものでもあるのだが、そこから想起され得るような勇ましさは主人公のクッキー、その相棒である中国北部出身のルーからは感じられない。ある種の料理映画でもあるし、当然「牛映画」であるが故に動物映画でもある。冒頭に女性が掘り当てた二人の人骨からキノコを貪るクッキー、そしてラストへと繋がるシークエンスは見もの。「ピーターハットンに捧ぐ」とあり、調べるとアメリカの実験映画監督らしい。未開の地のエスタンブリッシュメントである仲買商が連れてきた乳牛をきっかけとし、甘い夢を見る二人とその二人の夢を実現へと導くドーナツの話だった。乳泥棒を繰り返す二人の様子はまさにカウボーイだし、未開の地で夢を追いかける様子はまさに西部劇であるんだが。オフビート感とどことなく漂うルーザー感は併映されているジャームッシュ的なのだが、なんかそれだけとも言いがたい。これもまた映画。
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